内容説明
「双子というものは、互いの影を踏み合うようにして生きている」……ノビ師・真壁修一の相棒は、父母とともに炎の中で死んだ双子の弟の「声」。消せない過去を背負いながら、愛する女のために義を貫き、裏社会に葬られた謎に挑む、痺れるほどに哀切な「泥棒物語」。累計50万部を突破した著者渾身の超1級クライム・ミステリー、待望の電子化!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
401
これは面白い。主人公は警察官や刑事ではなく「泥棒」。横山さんにしては稀有な作品ではないでしょうか。とはいってもこの泥棒さん、やっていることはほとんど刑事もしくはハードボイルド探偵で(笑)、しかも観察力、洞察力、推察力、全てにおいてスパークラス。泥棒にしておくにはもったいなさすぎ。でもこういうタイプって得てして組織ではうまくやっていけないんですよねぇ・・・かと云って、元泥棒の探偵ってのもなんですが・・・(笑)。2017/01/04
ミカママ
356
ミステリーとさまざまな人情が複雑に絡み合った連作短編集。主人公の真壁がオトコマエすぎる。私としては、どうしても目線が「待つ女」の久子になってしまうわけで。ふたりには幸せになって欲しい(泣)。こういう作品は、ある意味一番横山さんの本領発揮、と言えるのでは。2016/07/22
yoshida
292
住人が寝静まった民家に忍び込み盗みを働く真壁修一は「ノビカベ」と呼ばれる。将来を嘱望されていた修一。双子の弟の啓二が万引きをし、将来を悲観した両親もともに自宅に火を放ち亡くなる。修一は犯罪に手を染めるが、耳の中に啓二の声が聴こえる。奇妙な双子の短編7編。犯罪の隠語の詳しさに、さすが横山秀夫さんの作品と思う。修一と啓二に想われた久子。修一と久子に幸せは訪れるのか。修一のストイックさと硬骨さを感じる。警察側を主人公に描くことが多い横山秀夫さんの作品の中で、犯罪者側が主人公の作品は珍しい。安定感のある作品です。2017/04/21
ナルピーチ
277
警察小説のイメージが強い著者であるが、本作は犯罪者を主人公として描いた作風となっている。深夜の闇に溶け込み住居に侵入し、誰にもバレずに現金を盗む。ノビ師を生業として通称“ノビカベ”の通り名を持つ真壁修一、過去に双子の弟を火事で亡くして以降、弟は修一の中耳に住み着く様になった。この修一と弟の啓二を軸とした連作短編集である。二人の兄弟愛、幼馴染みの久子とのもどかしい恋愛模様を垣間見ながら物語は進んでいく。そして迎える最終話、ラストの修一と啓二の会話にはとても切なさを感じた。2020/11/18
hit4papa
268
死んだ弟の声が聞こえる侵入盗が主役の連作短編集です。収録されている全7話で長編小説の流れを形成しており、読み応えがあります。泥棒という追われるものを主役に据えているためか、切迫感をともなった重苦しさが印象的です。