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内容説明
明治四〇年前後の「怪談の時代」を同時代として生きながら、「それぞれの自然主義」のあり方として民俗学と私小説を立ち上げた柳田國男と田山花袋。「自然主義」をめぐる「怪談の時代」の顛末を描き出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
121
著者の大塚さんの作品は昔「木島日記」で名前を存じ上げていただけですが、このような専門的な本をお書きになっているとは知りませんでした。民俗学が好きで昔から柳田国男全集を購読したりしていましたが、その原文からよくこのような作品を仕上げてくれたと感じます。同時代人との赤穂雄などを通じての柳田像が浮かび上がってくる気がします。力作だと感じました。2016/11/04
きいち
32
現在から歴史を見るのではなく、「その時点」で見るという貴重な経験。柳田、魅力的。◇私家版350部だった『遠野物語』。この時点では「民俗学」は成立していない(柳田がこの名前でいくことにしたのは昭和10年)。新体詩の詩人として名を知られ、かつ超高級官僚だった柳田が、自身まだ、この先自分が何を成し遂げようとしているのか見えないままに踏み出した、その時の実像に迫る。田山花袋、「都市小説の売れっ子」水野葉舟、遠野の佐々木喜善といった、その時期すぐそばにいた人たちとのズレを丹念に追うことで見えてくる風景がとても重厚。2016/10/09
佐倉
12
『遠野物語』を民俗学以前の物として読もうと試みる一冊。新体詩人としてデビューし竜土会という文学サロンの中心人物として田山花袋にネタ提供をしていた柳田の経歴から、遠野物語を自然主義文学のパラレル(大塚氏の言葉では花袋への当て擦り)な本として読み解く。自意識とその周辺に対して目を向けるのではなく他人の語りに目を向け、文一致文体に対する文語体で記された文章…話はそこから田山花袋、水野葉舟、佐々木喜善といった周囲の文学者たちの文章=自意識の在り方へと展開する。彼らは柳田となにを共有し、何を共有しなかったのか。2024/03/08
Theopotamos
4
当時の歴史や文壇の状況を丹念に追いながら、自然主義を文学史にとどまらない思想として捉えようとした作品。 柳田国男の民俗学は田山花袋の自然主義を批判したひとつの自然主義であり、水野葉舟の心霊主義への興味も科学的な視点を持っていたという点で広い意味で自然主義であった。この文学にとどまらない自然主義という考えは現在をどのように見てどのように理解・記述するか?という私たちの日常生活の視点の問題にも関連してくると思った。2017/12/12
mock-shiki
2
自然主義文学のくだりは、橋本治「失われた近代を求めて」シリーズを読んでいたのが良い補助線になったかな。しばらく大塚英志の柳田関係に手を出してみようと購入中。2016/07/10