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内容説明
処女にしてキリストを宿したとされるマリア。処女懐胎はキリスト教の中心に横たわる奇跡であり、夥しい図像を生み出してきた。「無原罪」の「~がない」という否定形の図像化一つとってみても、西洋絵画に与えたインスピレーションは巨大である。また、「養父」ヨセフや、「マリアの母」アンナはどのように描かれてきたのか。キリスト教が培ってきた柔軟な発想と表象を、キリストの「家族」の運命の変転を辿りつつ描き出す。
目次
第1章 マリアの処女懐胎
第2章 無原罪の御宿り
第3章 「養父」ヨセフの数奇な運命
第4章 マリアの母アンナ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
286
著書の岡田温司氏のご専門は美術史だと思われるが、本書の内容はしばしば神学(キリスト教学)に及ぶ。こうした絵画を理解するには当然なのかも知れないが、それにしても神学者かと思うレベルである。しかも、著者はそうした解釈を社会の大きなパラダイムとも連動させて捉えている。マリアの処女懐胎の意味、また何故マリアの無原罪が唱えられたのか、さらにはヨセフの意味と復権、おまけにマリアの母のアンナまでも俎上に載せる。お陰で、意味不明であった絵(複数)の持つ意味がよくわかった。キリスト教図像学は奥が深いとあらためて感心。2023/07/28
Nat
36
口絵のみがカラーなのが残念だったが、沢山の図象が紹介されていて良かった。特に第3章のキリストの養父とされるヨセフの数奇な運命が面白かった。危うい立場のヨセフが、最終的に聖者と扱われていく変遷が興味深かった。大好きなカルロ・クリヴェッリの『無原罪のお宿り』が、口絵で収録されているのが嬉しい。2022/01/22
いりあ
23
イエス・キリストの母マリアを中心に、"養父"ヨセフや"マリアの母"アンナが中世では、どのように考えられていたか、旧約聖書、新約聖書、聖書外典からスタートし、絵画や彫刻を通して考察しています。タイトルだけだと、もっと宗教色の強い内容を想像しましたが、どちらかというと美術史としての色合いの濃い内容です。今まで、イエスの誕生というのは、キリスト教として一番重要な部分ではないかと思っていましたが、時代や政治的要求によって、だいぶ解釈が変わっているのだなと分かりました。2014/09/17
Homo Rudolfensis
13
☆4.0 新書ですが、図版もかなり多めで満足な一冊。名前の通り処女懐胎について話しているのはもちろんですが、聖母の母アンナやイエスの養父ヨセフなどについても触れています。受胎告知の絵が好きなので面白かったです。受胎告知は、バロックは壮大すぎてちょっと引いちゃいますが、ルネサンスなんかは当時のイスラエルとしては綺麗すぎるだろ、という背景がいい感じに非現実感を出してて幻想的なんです。なので皆さん受胎告知を画像検索しまくって下さい!カルロ・クリヴェッリさんが非常にオススメです!2021/09/30
takakomama
8
マリアの処女懐胎の他に、無原罪の御宿リ、養父ヨセフ、母アンナについて多くの図版と共に解説。養父ヨセフの評価は、ふがいない男から復権してマリアと対等になったそうです。母アンナは3度結婚! たくさんの画家が描いているので、美術史や絵画の様式の変遷もわかります。大学の社会人講座の西洋美術の先生のお勧め本。2023/06/22