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内容説明
ダンとユーナの兄妹は、丘の上で遊んでいるうちに偶然、妖精のパックを呼び起こしてしまう。パックは魔法で子供たちの前に歴史上の人物を呼び出し、真の物語を語らせる。伝説の剣、騎士たちの冒険、ローマの百人隊長……。兄妹は知らず知らず古き歴史の深遠に触れるのだった。ノーベル賞作家キプリングが、イギリスの歴史の情景を生き生きと描き、大人の心にも歴史の芳醇な香りを残す、児童文学の代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
131
ペベンシーの丘の上で妖精パックに出会った兄妹は、魔法で呼び出された歴史上人物の物語を聞く。活写される英国歴史の変わり目は戦に直結しており、時代相応の帝国至上主義な高慢さと共に勤勉な著者の自負が現れている。ウィーランドの剣の話は『ロビンソン・クルーソー』後半の船旅を彷彿とさせる冒険譚に発展。百人隊長の話も英雄に対する著者の憧憬が顕在化したストーリーで、上層や周囲の力関係に翻弄される前線の視点でそこはかとなく虚脱感が漂っている。この他は小品揃いで、皮肉と風刺の効いた英国らしい笑劇やメタ効果が登場してより多彩。2022/06/29
キムチ
61
元来 英国には豊な児童文学の歴史がある。征服されて して報復の応酬に、宗教が絡むコンテキスト達…その血が子孫に残す想いを掻き立てるのだろうか。英国の歴史がノルマン、スラブ民族、アングロサクソンから分化した仏、西、葡と混血して世界地図を幾度も書き替えた史実は文学のみならず音楽(オペラ、民俗的なそれ)まで留まる処を知らぬ。キプリング?ジャングル・ブックでしか知らなかった彼が児童文学のカテから飛翔し 英国ファンタジー、いやいや剣と威信のロマンを呈するとは。丘の傍らで語りに耳を傾けるダンとユーナーは子供の形を→2025/01/17
星落秋風五丈原
38
今でこそ難民反対!とシュプレヒコールを掲げているが、イギリス民族という人種はない。フェニキア人、ガリア人、アングル人、デーン人、フリジア人、様々な民族が小さな島にやってきた。その後、ノルマン・コンクエストがやってくる。宗教で真っ二つに分かれた歴史も持つ。今もなお、アイルランドとの間には確執が残っている。民族問題は存在している。しかし、個対個であれば、理解を深め、協力して共通の敵に立ち向かうこともできる。『真夏の夜の夢』では、若さゆえにやらかしてしまう未熟者のイメージだったが、本編ではやや大人の印象が強い。2024/09/18
かもめ通信
31
光文社の古典新訳っててっきり既に他に邦訳があるものを「新訳」で、という企画なのかと思っていたのだけれど、この作品、本邦初邦訳なんだそう。物語を読むうちにシェークスピアの作品へ思いをはせてしまうのはもちろんのこと、ごく自然にイギリスのオックスフォードシャー州にあるウェーランドの鍛冶場(Wayland's Smithy)という墳丘やそこにまつわる伝説を知り、ノルマン人とサクソン人の争いの歴史に思いをはせ、現在のイギリス王室の基になる系譜を学び、宗教問題についてまで考えさせられてしまうなかなか奥深い物語だった。2016/09/28
えりか
28
キプリングはジャングルブックの印象しかなかったのだけど(それもかなりうろ覚え)これも面白かった。妖精パックと過去の騎士たちが子供たちに語る昔の物語。昔話。神話。そして詩。子供の時に読んでたら、もっとワクワクして楽しかっただろうなと思う。自分の前にもパックが現れてくれないかなと想像していたにちがいない。その土地の、そこにいた人々の物語。土地も人々の意志もずっと受け継がれていくし、繋がっている。面白いなぁ。いいなぁ。好きだなぁ。続編もあるようなので、光文社古典新訳から出ないかなぁ。読みたいなぁ。2016/01/29