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内容説明
シーザーが帰ってきた! 凱旋する英雄を歓呼の声で迎えるローマ市民たち。だが群衆のなかには、彼の強大な権力に警戒心を抱くキャシアス、フレヴィアスらの姿があった。反感は、暗殺計画の陰謀へとふくらむ。担ぎ出されたのは人徳あるブルータス。そして占い師の不吉な予言……。耳をくすぐる言葉、卑しい媚びへつらいにも動じないシーザーに、死はとつぜん訪れた。息遣いが聞こえる演出家の名訳・第2弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マエダ
101
“この劇に描かれる政治の世界では、「正義」とか「公明正大」といった公的な価値の起源が、結局のところ、無定見きわまりない群衆の意思にほかならないこと、そして、この根本的な不確実性、恣意性の認識が、劇の主人公たちの精神の深部にまで浸透し、侵蝕していることを示したかったからにほかならない。"ここまでは考えられなかった。2017/08/25
molysk
68
凱旋するジュリアス・シーザーを、歓喜で迎える民衆。王冠を戴かんとするものを討つは、ローマの大義のため――。高潔の士、ブルータスは企てに加わり、シーザーを暗殺する。ブルータスは己の正義を訴えるも、シーザー配下のアントニーの巧みな演説で、市民の怒りはブルータス達に向かう。祖国が己の命を欲するならば、自らに剣を突きつける。戦いに敗れたブルータスは自らの言葉通り、生涯を閉じた。無定見で衝動的な群衆に翻弄される支配者たち。己の正義を信じながらも、群衆の審判に恐れおののく。劇中の独白に、ブルータスの心理が語られる。2023/12/17
優希
48
ブルータスとシーザーをめぐる暗殺劇。途中でシーザーは殺されますが、登場しなくても存在感があるのが凄いですね。ブルータスがシーザーを殺めたことで、民衆の心理が変わっていくのが印象的です。ブルータスの独白とまわりの人々のブルータス像を通じて、いかに彼がシーザー暗殺を企んだのかが語られる。上質なミステリーを読んでいるようでした。2024/07/27
kazi
36
シーザー暗殺という大事件からフィリッピの戦いまでを扱ったシェイクスピアによる歴史劇です。初めて読んだけど、シェイクスピアはブルータスをシーザーの独裁からローマを救わんとする清廉潔白の士として描いていたのね・・。本作を翻訳した安西撤雄先生が巻末の解説で正義を標榜するブルータスの精神の内部に潜む自己欺瞞・葛藤を指摘しており大変興味深い。『「正義」とか「公明正大」といった公的な価値の根源が、結局のところ、無定見きわまりない群衆の意志にほかならないこと、2021/07/06
ころこ
34
「お前もか、ブルータス。」がダブルミーニングになっています。シーザー暗殺が真ん中に来ており、前半はこのセリフがブルータスに対する驚きと失望と自らに対する失望の意味で話が進行し、後半は「私と同じ運命を辿る」という亡霊の予言の成就になっています。前半はブルータスの高潔で無私なところや、妻ポーシャに対する家族愛が強調されます。対するシーザーは理性を失ってるとされ、独裁者を排除する作戦が計画されます。ところが読んで気付くのは、シーザーが理性を失っているようにみえないことです。シーザーの妻カルバーニアとのやり取りは2018/09/20