内容説明
宝くじに当った河野は会社を辞めて、碧い海が美しい敦賀に引越した。何もしないひっそりした生活。そこへ居候を志願する、役立たずの神様・ファンタジーが訪れて、奇妙な同居が始まる。孤独の殻にこもる河野には、二人の女性が想いを寄せていた。かりんはセックスレスの関係を受け容れ、元同僚の片桐は片想いを続けている。芥川賞作家が絶妙な語り口で描く、哀しく美しい孤独の三重奏。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
365
2005年度の芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞作。絲山秋子といえば、お仕事小説のイメージだが、本書はそれとは逆に無職の河野が主人公の物語。ついでに言うなら、この小説は基本的には恋物語でありながら、性的なものが介在しない。少なくても表面的にはそうだ。もっとも、深層では意味を持っていそうなのだが。ファンタジー(神様のようなもの)の設定などは川上弘美を思わせるが、本質はシリアス。三者三様の心の葛藤と、彼らの置かれた境遇はせつなく心に響く。人間存在の持つ本質的な孤独がテーマなのだが、それを見つめる作家の眼は暖かい。2013/04/07
ミカママ
355
しょっぱなから「ファンタジー」なる謎の神様出てきて、うわ苦手な分野?と思ったのが大間違い。初期の頃、貪るように立て続けに読んだ絲山(当時は一発変換できなかったのに!)さんの作風を思わせる秀作。彼女のキンキンに研ぎ澄まされた感性を、ここでまた追体験させていただけた。2018/03/04
しんごろ
269
なんて作品だ!面白いだけではない。かなり引きこまれる。気づいたら涙が一粒流れてしまいました。コメディかと思ったらまんまと騙された。面白いから一変して切なく哀しくなりますが、なんとなくハッピーエンド…。ううむ、心に染みる凄い作品だ!神様のファンタジー!君はなんだかんだで主人公の河野、彼女のかりん、元同僚の片桐のそれぞれの孤独を、ちゃんと癒やしていたよ。決して役立たずの神様ではないよ。みんな孤独や寂しさを感じながらも、きっと幸せを感じて生きているよ。自分が寂しさを感じたら、またこの作品を何度も再読します。2017/10/18
おしゃべりメガネ
226
ハードカバーで以前読了でしたが、正直全く話を覚えてなく、文庫にて再読しましたが、なぜこんなにもステキな作品を覚えていなかったのか、我ながら不思議でなりません。見える人にははっきりと見える神さまこと「ファンタジー」がとにかく痛快で、浮き世離れした主人公「河野」と女友達の「片桐」、主人公の彼女「かりん」と魅力あふれる面々にて繰り広げられる物語は笑いあり、涙ありで引き込まれます。特に中盤のロードムービー的な展開から「かりん」の'告白'あたりが絲山ワールド全開です。何度も読み返したくなる素晴らしい作品でした。2017/05/07
風眠
215
ハッピーエンドではない、けれど、深い。そんな不思議な安らぎがある物語。人はいつだって孤独を抱えていて、すべてが思い通りになるわけじゃない。すれ違う心、見つめ合う視線のその先、敦賀の海岸でそれぞれの遠い景色を眺めながら、自分の心の奥へ奥へと潜っていく。逃れられなくてジタバタして、それでも人生の歩を進めていこうとする4人の男女。「役に立たないが故の神」である「ファンタジー」とともに、「孤独という人間の輪郭」をくっきりさせようと、さすらう姿が、軽やかでもあり、妥協のない覚悟のようでもあり、哲学的でほろ苦い。2014/04/01
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