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内容説明
自分の鼻が一人歩きをして物議をかもす「鼻」。貧しい官吏が思い切って新調した外套を奪われ幽霊となって徘徊する「外套」。戯曲「査察官」では、ある地方都市にお忍びの査察官がくるという噂が広まり、市長をはじめ小役人たちがあわてふためく――増殖する妄想と虚言の世界を新しい感覚で訳出し、従来の深刻、生真面目な作家像を完全払拭。代表作3篇を収録した、これぞゴーゴリの真骨頂。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
59
面白かったです。こう出て良いのかと思うことの連続ですが、それらがそれぞれ笑えるのです。皮肉の効いた物語を楽しみました。2022/12/25
めしいらず
58
著者の代表作3編。相手の肩書きや階級によって威張ったりへつらったり態度をコロコロ変えるのに忙しい人たちの滑稽譚。頓狂で味わい深い「鼻」よりも、まるでコントを観ているような「査察官」よりも、可笑しみの中にも悲哀が滲む「外套」がいい。他人と自分を比較して尊大だったり媚びたりする同僚たちと違い主人公は慎ましい。与えられた仕事に没頭しそのことに喜びを感じている。彼のシンプルな人生観をかき乱すのは周りの者たちだ。一瞬の喜悦からやり切れぬ悲憤へ向かう彼の人生の不条理劇。所詮は人生そんなもの。小さな喜びすら奪っていく。2020/09/22
燃えつきた棒
58
『外套』 アカーキー・アカーキエヴィチとは僕だ。 それは、ちょうど「棒になった男」が僕であり、「無能の人」が僕であったのと同じように。 彼が失った「外套」とは果たして何だったのか? それは、誇りだったのだろうか? それとも希望だったのだろうか? ゴーゴリは、この作品において、生の一つの典型を見事に描ききっている。 数多のアカーキー・アカーキエビッチたちの生は、ゴーゴリによって見事に歴史に刻み込まれたのだ。 2017/08/30
マエダ
52
小説よりもゴーゴリの生涯が面白い。2019/07/08
翔亀
50
ドストエフスキーの「我々はみんなゴーゴリの『外套』から生まれた」という発言は出典が明らかではないそうだが、黄金のロシア文学の幕開けを飾る作品。人間と社会の不条理というか、外面的な<滑稽さ>に対する乾いた哄笑が渦巻き、カフカの「城」の官僚制の不気味さを喜劇に仕立て上げた感じ。「外套」では単なる服装、「査察官」では査察官という地位、こういう外面によってどれだけ人間が惑わされ変わりうるか、を冷やかに描く。でも読後感がよいのは、惑わされる人間を否定しない暖かな眼があるからだろう。明るい諦念による人生一口噺だ。2014/10/13