内容説明
ささやかなハプニング、仄(ほの)かな心のざわめき。何度か顔を合わせた程度の女友達から強引に部屋に誘われた恭子。しょうがなく訪れた彼女のマンションで見たものは……。表題作ほか「ハローウィーン」「アメリカを連れて」など6作品を収録。何気ない日常を淡々と描きながら、気にも留めずにやり過ごしている“心のざわめき”を繊細に浮かび上がらせる掌編集。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のせ*まり
33
日常って、劇的なことが起こるわけじゃないけど、気持ちがざわつくことの連続だと思う。例えば、話好きな隣室のおばさんに捕まってしまった時のめんどくささとか、さして親しくない知人と必要以上に関わらなければいけなくなった時とかに、ふっと生まれる。ただ、私には、そんなどうしようもなくめんどくさいものが恋しくなる時が瞬間的にある。この瞬間こそが『生きること』なんだと思う。煩わしいのに愛おしい、そんなことに気づいたのは、きっと、藤野さんの視点が、クールで、そして暖かいから。2017/08/12
巨峰
18
短編集とはいえ、あまりにもあっさりしすぎている印象。「父の帰宅」は面白かったけど。どこがいいのかわからない短編が半分だった。女性心理はよく描けている気がする。って、女流じゃないしw2010/11/15
カピバラ
17
淡々と物語が進んでいき、なんとなーく終わるという話が繰り返されていた印象。きらいではないけれど、すっごく面白かったというわけではなかった。2014/01/11
zanta
14
154/6/1/2016 彼女と部屋 それにともなう関係性とか悲喜こもごも。って言うほど現実的な感じではなく。シュールな感じ。気になるのはお父さんはどうやって帰っていったの!?ということ。どの掌編も、ここに書かれている事より、その後の方が気になる。つまり妙な切り口で後を引く。2016/06/01
井月 奎(いづき けい)
14
藤野千夜の大きい転機です。「なにかがおかしくて、どこかに恐怖の種がある。」話から、「なにかがおかしくて、そこかしこに可笑しさがある」話になっています。六作ありますが、三作ずつ仲よく「恐怖」と「可笑しさ」の話に別れています。その「可笑しさ」の話も、ただ可笑しいのではなく、仄かに怖い感じが付きまといます。それは今でも続くこの作家の最大の特色で魅力です。今まで築き上げたものを捨て去る恐怖と闘って、見事に自分の新しい作風を確立した記念すべき短編集で、さらに言えばこの作家の言葉遣いの度胸の良さは特筆すべき点です。2015/07/26