内容説明
「いちど観てみたいわ、春を。ここには夏しかないものね」 ぼくは柔らかい春の雨を想像した。美しく残酷な夏の終わりに―― 日本SF大賞受賞作家の初長篇、待望の電子書籍化。仮想リゾート〈数値海岸〉の一区画〈夏の区界〉。南欧の港町を模したそこでは、ゲストである人間の訪問が途絶えてから1000年、取り残されたAIたちが永遠に続く夏を過ごしていた。だが、それは突如として終焉のときを迎える。謎の存在〈蜘蛛〉の大群が、街のすべてを無化しはじめたのだ。わずかに生き残ったAIたちの、絶望にみちた一夜の攻防戦が幕を開ける――仮想と現実の闘争を描く〈廃園の天使〉シリーズ第1作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
252
構想から10年の歳月をかけて書かれたというSF大作。そして、そこでは「大途絶」から1千年後の「夏の区界」のヴァーチャル世界が実に緻密な筆致をもって描かれる。小説世界の基本構造は極めてシンプルである。ジュールと、ジュリー、ジョゼとアンヌがそれぞれの極をなしつつ、そのムーヴメントが作品の時間を形作っていく。この作品に内包されるもの、そしてここで描かれるものは、「時間」そのものの形象だ。そして、そのすべてを見通すことになる老ジュールこそは、まさにゲルマン神話の「さすらい人=ヴォータン」にほかならないのである。2014/04/02
harass
87
仮想空間の区画の一つ、〈夏の区界〉は南欧の寂れた港町をモチーフにし、住民のAIたちが住み、現実世界の人間を歓待するリゾートであるが、突然人間が訪問しなくなって千年が経ったある日、危機を迎える…… 数年ぶりの再読。ほぼ忘れていたのもあるが、ここまで面白かったかと、ため息と戦慄に震えてしまった。SFのアイデアとしてはさほど新しくはないと著者。だが、この卓越したエロスを感じさせる文章力を再確認。AIたちの行動原理や設定などのメタ視点が面白い。ラカンの現実界やニーチェの永遠回帰など、読中にいろいろ連想。2018/12/08
とくけんちょ
60
第1作ということで、謎が膨らみ爆発寸前で終了。マトリックス的なこういう話ってまだまだ可能性がある。現実と虚構の関係性はまるで語られず、破壊だけが進行する。SFで、硝子体、天使、蜘蛛などの用語はでてくるものの、ついていける。置いてけぼりにされるレベルではない。飛浩隆の想像力は素晴らしい。理解するにはガイドブックがいるね 笑2021/08/09
k16
53
20110219読了。 面白かったぞ。 しかし連続される残酷な場面に圧倒され苦痛を伴う。 続編・・読まねば。2011/02/19
GaGa
50
いわゆるアバタ―作品。丁寧な筆致で、その詳細が上手に語られているところは評価したい。さらに、消滅の描写もそれなりに上手く、いい感覚はある。ただね。腐るほどSFを読み続けてきた中高年としては、全く持って新しさは何もない。これは多元宇宙という感覚の方が私たちには衝撃だったからかもしれない。改めて考えると中身は何もないことに気づくしね。2013/03/19
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