内容説明
東京の或る交響楽団の主席トランペット奏者だったという犬伏太吉老人は、現在、岩手県は遠野山中の岩屋に住まっており、入学したばかりの大学を休学して、遠野近在の国立療養所でアルバイトをしている“ぼく”に、腹の皮がよじれるほど奇天烈な話を語ってきかせた……。“遠野”に限りない愛着を寄せる鬼才が、柳田国男の名著『遠野物語』の世界に挑戦する、現代の怪異譚9話。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
rico
120
作者の分身とも言える青年が、いわくありげな老人から聞かされる物語の数々。不思議で、ちょっとエロくて、不気味で・・・。「遠野物語」自体まともに読んだことはないけど、いくつかは既知の物語だった。人間が自然の中で暮らしていた頃は、こんな奇譚は珍しくなかったのだろう。隅々まで照らす人工的な光は闇を追い払ってしまった。でもそこかしこの暗がりにきっと、異界への入り口が隠れてるはず、なんだけど、住む人のなくなってしまった地では怪異を目撃する人間もいないわけで。時折出てくる震災で傷を負った地域の名前。何も言えない。2021/03/30
KAZOO
117
井上さんが遠野物語を現代に置き換えて学生で休学して釜石近くで働いている人物がある老人からその経験をもとにした話を聞きとる物語です。最近絵本(京極夏彦さんの)でも遠野物語を読んでいますが、ここに書かれている9つの物語も愉しませてくれました。河童らしき人物や馬と人間の恋物語らしき作品もあります。また最後の終わり方が非常にうまいという気がしました。2025/02/06
buchipanda3
92
「人間が人間を信じられなくなったらおしまいさ」。物語、物語だなあ。井上氏による遠野物語へのオマージュ作品。遠野近在の山に住む犬伏老人のちょいと不思議な体験談を"ぼく"(著者の分身のようだ)が伺う。柔らかい文章はユーモラスさを醸し出し二人のやり取りにクスッとなったりする。でも話を聞き進めていくと不意を突くように面妖な一面が顔を出し、それがやがて得も言われぬ余韻へと繋がっていく。山躑躅の花は紅いよなあ。かもしれないし、そうでないかもしれん。生き物にも何にでも心があった。生活と自然の境目がまだ曖昧な頃を語る話。2026/01/28
ふう
67
「遠野物語」を読んでいないので比較できませんが、井上氏の文章の上手さと独特のユーモアで、ゾッとしたりクスッとしたりしながら読みました。昔、自然に囲まれ、自然と共に暮らしていた人々は、ふとした折に何かの気配を感じたり、人智の及ばない出来事に遭遇したりして、自然への畏怖を抱いていたのでしょう。現代に生きる人々が失った感覚もありそうです。語り継がれてきた民話には、そんな感覚を呼び起こすただならぬ雰囲気があります。読んでいるわたしも、最後に狐につままれてしまいました。『川上の家』河童の子どもの話が悲しく怖かった…2014/05/20
kk
66
『遠野物語』へのオマージュってことでしょうか。某サイトの内容紹介に「腹の皮がよじれるほど奇天烈な話」なんて書いてあったのでユーモア小説だと思って読んでみたのですが、奇天烈なのは確かにそうですが、どっちかと言うと、不思議な話やちょっと怖い話などが中心のようです。少なくとも、kkの腹の皮はよじれませんでした。2021/03/07
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