内容説明
小さな川の流れを呑みこんでしだいに大きくなっていく紀ノ川のように、男のいのちを吸収しながらたくましく生きる女たち。――家霊的で絶対の存在である祖母・花。男のような侠気があり、独立自尊の気持の強い母・文緒。そして、大学を卒業して出版社に就職した戦後世代の娘・華子。紀州和歌山の素封家を舞台に、明治・大正・昭和三代の女たちの系譜をたどった年代記的長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
470
有吉佐和子は初読。まずは代表作とおぼしき本書から。紀ノ川を表象のシンボルとして明治から昭和にいたる時の流れと、真谷一族の流れを描き出した、なかなかに流麗な小説。三代にわたる女性たちを巡る表現は、ふと谷崎の『細雪』を想起させる。小説全体の主人公は初代の花だが、他の二人もなかなかに魅力的だ。好悪は分かれるだろうが私の好みでは、2代目の文緒に魅かれる。花は、旧時代の「家」に拘泥するのだが、真谷家を継承するのは、まぎれもなく女たちである。それに比べると、当主の政策はともかく男たちの影は遥かに薄いのである。2019/02/27
buchipanda3
88
「お前はんのお母さんは、それやな。云うてみれば紀ノ川や」。明治から戦後、紀州旧家に生まれた女性達を描いた物語。先日、嶋津輝さんが口にしたのを聞いて手に取ったのだが、読後、良い小説を読めたなあと思えた。冒頭、豊乃が孫の花の手を引いて早春の九度山を登る場面から掴まれる。格式と景観の抒情豊かで流麗な描写に魅入りながら花の人生の入りを見守った。真谷家の御っさんとして毅然と役を務めた花。一方で花の娘・文緒は近代趣向、孫・華子はその両面を見て育つ。時代は移ろう。それでも最後まで悠然とした生き方を見せた花の姿が残った。2026/02/08
小梅
88
有吉佐和子は美しい女性を書かせたら抜群だ 三代の女性達を其々が魅力的である 読了日が不明になっていた為に登録し直しました。2018/02/02
じいじ
85
もう新作が読めない有吉佐和子だが、読むほどに彼女の小説の面白さ、奥深い魅力から抜け出せなくなっています。今作は、著者の生まれ故郷「紀ノ川」を舞台に、明治・大正・昭和の三代にわたって綴った著者渾身の女絵巻です。物語は三代にわたって語るまえに「女の命の逞しさは、流れゆく水に逆らってはならぬ…」の信念のもと、亡き母親に変わって孫娘の「花」を手塩にかけて育て上げた豊乃は、出しゃばらない魅力あるお婆ちゃんです。五艘の舟での嫁入り、嫁・姑の問題…など読みどころ満載です。もって生まれた「女の宿命」を感じた力作です。2025/03/13
Nobu A
75
有吉佐和子著書5冊目。64年発兌。私が生前に執筆された名作。読書中に思ったのが、国内は疎か世界が均一化していく中、このような土着性の強い小説が消えゆくこと。明治・大正・昭和三代の女性達に脈々と受け継がれる系譜。紀州和歌山と言う土地柄も無縁ではない。何故なら紀ノ川と言う古来から存在し、周りの小川を呑み込み、雄大に息づく自然があるからこそ。男尊女卑と一言で片付けるのではなく、凋落して行く地方の素封家を支える女性が最後まで鳴蝉潔飢なのが胸を打つ。それらを巧みに言語化している作家に感嘆。有吉文学の濫觴を垣間見た。2025/12/05




