内容説明
小さな川の流れを呑みこんでしだいに大きくなっていく紀ノ川のように、男のいのちを吸収しながらたくましく生きる女たち。――家霊的で絶対の存在である祖母・花。男のような侠気があり、独立自尊の気持の強い母・文緒。そして、大学を卒業して出版社に就職した戦後世代の娘・華子。紀州和歌山の素封家を舞台に、明治・大正・昭和三代の女たちの系譜をたどった年代記的長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
457
有吉佐和子は初読。まずは代表作とおぼしき本書から。紀ノ川を表象のシンボルとして明治から昭和にいたる時の流れと、真谷一族の流れを描き出した、なかなかに流麗な小説。三代にわたる女性たちを巡る表現は、ふと谷崎の『細雪』を想起させる。小説全体の主人公は初代の花だが、他の二人もなかなかに魅力的だ。好悪は分かれるだろうが私の好みでは、2代目の文緒に魅かれる。花は、旧時代の「家」に拘泥するのだが、真谷家を継承するのは、まぎれもなく女たちである。それに比べると、当主の政策はともかく男たちの影は遥かに薄いのである。2019/02/27
小梅
87
有吉佐和子は美しい女性を書かせたら抜群だ 三代の女性達を其々が魅力的である 読了日が不明になっていた為に登録し直しました。2018/02/02
じいじ
81
もう新作が読めない有吉佐和子だが、読むほどに彼女の小説の面白さ、奥深い魅力から抜け出せなくなっています。今作は、著者の生まれ故郷「紀ノ川」を舞台に、明治・大正・昭和の三代にわたって綴った著者渾身の女絵巻です。物語は三代にわたって語るまえに「女の命の逞しさは、流れゆく水に逆らってはならぬ…」の信念のもと、亡き母親に変わって孫娘の「花」を手塩にかけて育て上げた豊乃は、出しゃばらない魅力あるお婆ちゃんです。五艘の舟での嫁入り、嫁・姑の問題…など読みどころ満載です。もって生まれた「女の宿命」を感じた力作です。2025/03/13
榊原 香織
66
紀州女3代記。 風土に根差した小説、て、地味目だけれどしっとり面白い。2代目は大正デモクラシーの風に吹かれ、海外生活、戦争、と派手目。 さすが名作2024/05/02
NAO
64
九度山の地主の家に生まれた花を中心に、旧家の繁栄から戦後の没落まで、女系3代を描いた作品。家は、いざというとき自分の拠り所となる場所、そこに帰属するものにとっての安らぎの場所であり、最後の砦である。そして、それを守っているのは実は男ではなく女なのだと作者はいう。夫の出世のために身上を潰しながらもたくましく家を守り、戦後の家の崩壊とともに消えていった花は、没落地主階級の最後の美しい「花」だった。2024/02/07
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