内容説明
小学生の娘と羽根つきをした微笑ましいエピソードに続けて、「私の羽根でないものは、打たない」、私の感情に切実にふれることだけを書いていく、と瑞々しい文学への初心を明かす表題作を始め、暮らしと文学をテーマに綴られた90篇。多摩丘陵の“山の上”に移り住んだ40歳を挟んだ数年、充実期の作家が深い洞察力と温雅なユーモアをもって醸す人生の喜び。名作『夕べの雲』と表裏をなす第一随筆集。
目次
宿題
憂しと見し世ぞ
道のそばの家
危険な事業
息子の好物
たつたの川
子供の盗賊
弟の手紙
会話
幸福な家庭と不幸な家庭〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
U
28
先日購入した署名入り文庫本で読了。庄野潤三氏の随筆90篇を、Ⅰ部(日常生活のひとコマ)・Ⅱ部(文学観や好きな作品について)・Ⅲ部(主に作家との交流)の分類でまとめた随筆集。今回読んで惹かれた話が多かったのはⅠ部ですが、Ⅱ部の冒頭を飾る表題作や、Ⅲ部の伊東静雄と井上靖のエピソードも好き。とくにⅠ部の「無精な旅人」は、自分への戒めとして強く響いた話。また、ランサムさんとの話が良かったので、『ガンビア滞在記』を読みたいと思っています。2017/11/05
こうすけ
14
庄野潤三エッセイ集。作家についての話が面白い。堅苦しくない、日常のなんということもない出来事をつづっている。2022/11/28
きゅー
8
随筆集。程よく肩の力が抜けて気楽に読めるのが良い。寝ていると天井からムカデが落ちてくるので、熟睡しているときは気を付けないといけないとか、息子の小学校が徒歩30分近くかかるので大変だという話など。そういう雑記の中で「自分の羽根」は彼の文学についての態度を凝縮した小論として注目したい。こう書いてある。「私は作品を書くのにそれ以外(自分の経験以外)の何物にもよることを欲しない。(中略)私にとって何でもないことは、他の人にとって大事であろうと、世間で重要視されることであろうと、私にはどうでもいいことである。」2019/02/25
utataneneko
2
身の回りの出来事、文学の話、友人・知人の話…魅力的なエッセイがぎっしり詰まった一冊です。2008/11/01
ほたぴょん
1
初期の随筆集。かなり短い文章が多いのが特徴で、これは新聞等に発表したものが多いという事情もあるが、著者自身の好みもあるとのこと。身の回りで体験したことだけを書くというスタイルで、これは先日読んだ『うさぎのミミリー』とも共通しているが、この頃の文章の方が緊張感があって良いと思う。2020/02/24