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内容説明
権力とは「見えない」かたちで動き、われわれを「殺す」よりも「生かす」ものとして働く不気味なシステムなのだ。知の巨人・フーコーの思想を中心に、ドゥルーズ、アガンベン、ネグリらの問題意識とその論理を読み解きながら、グローバル化し、収容所化する現代世界の中で、「ポジティヴ」に戦い続ける希望を提示する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
59
先日読んだ『生権力の思想』大澤とよく似た題名の同じちくまの新書からでているこの本(2006)を手に取る。この著者の「ドゥルーズ解けない問いを生きる」に感心したので借りた。フーコーの研究テーマの一つ、生権力(近代では、権力は人を殺す権力ではなく、人を生かす権力に変化した)の解説とそのエッセンスを応用発展させた、アガンベンやドゥルーズ/ガダリとネグロ=ハートの著作から紹介していく。後期フーコーの入門書であり、宮崎勤事件を語りたい大澤本とまったく別。難解な思想書をわざわざ読むことの意義について自覚できた良い本。2017/08/12
フム
29
勉強になった。今まで読んだ数冊のフーコー入門書の中で一番わかりやすかった。というか、私が知りたいと思っている生権力、生政治学について初学者にもわかるように整理されている。巻末の読書案内も参考になる。フーコーが見いだした生に介入する権力、という概念は規律訓練型権力からさらに発展し生殖や誕生、死亡率、健康の維持、寿命などがテーマとなる。今感染症で注目の公衆衛生学も、身体への直接介入ではなく、社会全体を展望して調整を図っていく権力である。2020/07/13
ネムル
18
フーコーからドゥルーズ、アガンベン、ネグリへと生権力の系譜を考察する。いまのコロナ禍よりも、別の興味から読んだ本だが、現代史へも生殖SFを見据えるにも役に立つと思う。15年も前の本ということでアガンベン読解もまだ入口だけ、もっと適した入門書もありそうだが、過度に難しくならずに丁度よい案配に読める。2020/08/28
おたま
11
フーコーの<生権力><生政治学>という考えを通して現在の社会における権力や政治、あるいは抵抗のあり方について、大変示唆的な本。フーコーからさらにアガンベン、ドゥルーズ、ネグリと展開させていくことで、より現代の権力、政治、グローバル化、生全体の管理とそれに対する抵抗ということを考えさせられた。ちょっと違った角度から、例えばオーウェル『1984年』、伊藤計劃『ハーモニー』、京極夏彦『ルー・ガルー』等のディストピア小説を理解するためにも大変有効であるように思う。ディストピアには現代社会の問題が凝縮されている。 2019/05/28
フリウリ
9
左派における「正義」の困難さについて、ある作家が語っていたことが少し話題になっていたのですが、その語りや反応の焦点が何かずれている気がして、本書を読みました。およそ「世間」がどんな仕組みで、どれほどの虚偽等が含まれているかを知ることは大切ですが、それを知って語る人もまた同じ「世間」にどっぷり浸かっているのであって、つまり、そうした状況へのどうともならない葛藤があってこそ、通弊的に権威的でも挑戦的でもなく、未来へとつながっていく言葉が生じるのではないか、ということを、考えました。92024/09/01