内容説明
京の都が、天災や飢饉でさびれすさんでいた頃。荒れはてた羅生門に運びこまれた死人の髪の毛を、一本一本とひき抜いている老婆を目撃した男が、生きのびる道をみつける『羅生門』。あごの下までぶらさがる、見苦しいほど立派な鼻をもつ僧侶が、何とか短くしようと悪戦苦闘する姿をユーモラスに描いて夏目漱石に絶賛された『鼻』。ほかに『芋粥』『好色』など“王朝もの”全8編を収録する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
360
本書は芥川作品の中でも秀作な物語が多い。『羅生門』に『鼻』や『芋粥』など。とくに『地獄変』の後日談となる『邪宗門』も面白い(未完なのが玉に瑕)。本末の解説では、モデルを藤原道長・頼通父子としているが、自分は藤原兼家・道長父子だと思う。何故なら、道長の正室・倫子(源 倫子)は、土御門の姫君と呼ばれ、本作の中御門の姫と一字違い。すると語り部は、源 満仲で、甥と称する人物は、息子の源 頼光。あの四天王(渡辺綱、坂田公時、碓井貞光、卜部季武)の頭目ではないだろうか。そして摩利信乃法師は…… (あぁ字数が足りない)2015/11/17
kaizen@名古屋de朝活読書会
239
芥川龍之介は好きで、ほとんど読みました。羅生門は、あまり好きになれませんでした。昔は京都が好きでなかったからかもしれません。天災や飢饉という時代背景が後ろ向きだからかもしれません。荒れはてた羅生門という場所設定が暗い。死人の髪の毛をひきぬいている老婆という話が苦しい。男が生きのびる道を見つけるところはよかった。全体として暗い印象だけが残り、これが芥川賞の基準なのかと思い始めた。2014/06/29
ehirano1
228
「羅生門」について。まさに地獄絵図で、ヒトに宿る『闇』を改めて思うことになりました。その中で、右のニキビを触る時が「闇の門」のスイッチになっているのではないかと思いました。2024/11/17
こーた
222
人間の根っこにあるものは、千年の昔も明治期も、いまだってさほどかわらない。大好物の芋粥を、飽きるほど飲んでみたいという欲望。いざ目の前に差しだされたら、とたんに興味を失って。巨大な鼻のお坊さんに、島にひとり取り残されるお坊さん。男女と神仏をめぐるあれこれ。はるか昔の人々の、まこと自由で奇っ怪な発想の数々に、近代の息吹を吹きこんで再構築する。古典文学を知っていれば、より一層愉しめる。反対に、この芥川から入って原典にあたってみるのもまた良し。麗しくも生々しい王朝文学の世界へようこそ!【2018年の河童忌に】2018/07/22
ちくわ
195
【鼻】芥川龍之介がゴーゴリの『外套』に着想を得て『芋粥』を執筆したという話を聞いたので、二人の同題作品である『鼻』を比較してみようと読んでみた。ゴーゴリのような不条理さやコミカルさは少なく内供の心理描写・変化が中心なので、両作品の風味は随分違うと感じた。芥川版を現代風に設定変更すると、ブスは嫌だと整形した女性がその事を皆に揶揄されてより悩む物語か? 他人の視線=悩みの種なる普遍性を痛感すると同時に、自分が思うより自分は注目されていないという自意識過剰の事実には早めに気付いた方が生きる上では楽だよね(笑)。2024/02/19
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