内容説明
観光地として脚光を浴びる二十一世紀の月世界。砂上遊覧船〈セレーネ〉号は地球からの観光客を乗せたまま、突如起こった地殻変動のため一瞬のうちに塵の海の中へ没した。だがあらゆる信号を絶った同号を短時間でどう発見し、どう救助すればよいのか?精密な論理によって構築された世界に展開する人間ドラマ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
11
月面着陸の8年前、当時の月の「海」が砂の堆積とする仮説から、空気がなく、重力が地球の1/3で、月の反対側は地球から見えないという物理的条件の下(巻末解説)、そこに複数の人間が行ったら?本書はそんな思考実験のようだ。一方、文学的想像力の巧みさが際立つ点も興味深い。砂の「海」に沈没する遊覧船の人々の様子や救出シーンが並列して進む群像劇的なカットバック手法を駆使する本書は、機械的閉鎖空間での危機がテーマの海洋や航空のパニック作品に通じる緊迫感がある。作者は眼前に広がるスリランカの海からそれを発想したのだろうか。2023/09/17
kinka
8
月の「海」には何がある?そこには何億年もかけて堆積した塵が充満している。砂よりも細かく、液体のような流動性を持ち、完璧な絶縁体で、嵌まり込んだらアリ地獄のように逃れられない。予期せぬ事故でその「海」に沈没してしまった観光船と、救助の為奔走する人々、報道関係者らを群像劇的に描く、パニック小説というには少し地味目の本。クラークの作品は、綿密な科学考証や哲学的思惟のイメージが先行するけれど、どうしてどうして、これは上質のエンタメであり、人間の描きこみも巧み。ミステリ界隈ではお馴染みの深町さんの訳も小粋でいいな。2015/11/15
チョッピー
5
クリフハンガーな状況設定の連続や、登場人物のキャラクター設定の描き分けもくっきりと、今読んでも小説として十分に面白く読めました。余りにもありとあらゆる面で「端正」な印象を受ける為か、個人的には内容に見合った「ダイナミック」なインパクトに欠けているような印象も残りましたが、個人的嗜好の範囲かも知れません。古典SFが大好きな人間としてもお勧めしたい作品です。2013/10/24
ホレイシア
4
まだ読まれている、というのが嬉しい。2008/01/29
Kom
3
やはり名作。皆最善を尽くして救出にあたり、乗員もベストを尽くす展開が熱い。特に好きなのは娯楽委員会や裁判のあたり。似たようなテイストである『火星の人』もこれも両方良いな。2019/01/23
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