内容説明
戦後六十年の間、太平洋戦争は様々に語られ、記されてきた。だが、本当にその全体像を明確に捉えたものがあったといえるだろうか――。旧日本軍の構造から説き起こし、どうして戦争を始めなければならなかったのか、引き起こした“真の黒幕”とは誰だったのか、なぜ無謀な戦いを続けざるをえなかったのか、その実態を炙り出す。単純な善悪二元論を排し、「あの戦争」を歴史の中に位置づける唯一無二の試み。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
123
太平洋戦争の旧日本軍のメカニズムや開戦、快進撃から泥沼化、やがて敗戦といった経緯とともに何が問題だったのか書かれている。ミッドウェーやインパール作戦、レ入れ、アッツ、硫黄島の玉砕どれもが軍上層部の失態。今ロシアとウクライナで紛争が起きているがロシア兵のなかにすでに半旗を翻した者、上層部で混乱も起きているようだ。SNS戦争とでも言うのだろうか。演奏が終わってみれば皆責任のなすりつけ合い。民間人の被害が多いのはいつの戦争にも共通すること。第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争のように泥沼化しないように・・・2022/03/02
ふう
92
原爆投下は正しかったと考えるアメリカ人は多いと聞きます。原爆記念館を訪れ、被爆者の話を聞いて初めて原爆の恐ろしさを知り、本当に正しい選択だったのか悩む人もいると。知らなければ、事実を学ばなければ、きちんと考えることはできません。わたしの父も出征しましたが、その父が語る南方での戦争は、戦うよりも飢えて死ぬ兵士の方が多い悲惨なものでした。シベリアに抑留された兵士たちも同じでしょう。彼らの無念さから目をそらしたり美化したりせず、あの戦争についてきちんと知り、考えることが、次のより良い選択に繋がるのだと思います。2016/11/29
mitei
65
先の大戦の評価に終止符を打つとは著者の言だが、本当に教科書通りに書かれていて、犯人はこいつだと言って終わっただけの本だった。悪いのは陸軍だけでなく海軍の方が悪いという新説?を出したのが目新しく感じた。2011/03/07
パフちゃん@かのん変更
63
著者曰く戦争を始めたのは海軍だとのこと。ABCD包囲網で日本は仕方なく南部仏印に進出したと言っているが偽りの理由付けだ。戦争をどう終わらせるかも考えていなかった。大本営政府連絡会議で決まった腹案は「蒋介石政府を屈服させる。そのうえでドイツ、イタリアと提携してイギリスを屈服させ、アメリカの継戦意思を喪失せしめる」というお粗末で見通しの甘いもの。陸軍と海軍が意地を張り合って、大本営発表は嘘ばかり。軍人は「生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残す事勿れ」と、玉砕をよしとしていた。誰のための戦争なのか。2017/04/17
ちゃんみー
59
あの戦争、といえば当然にして太平洋戦争のこと。何故にあんな無謀な事をしてしまったのか、誰が首謀者だったのかなどなんとなくしか分からないことを解き明かしたく読みました。『小さいおうち』を読んだのがきっかけです。あり得ない扇動洗脳の元、多くの日本人が散っていったこと、市井の人々の苦労を改めて感じ取りました。2015/02/22