内容説明
予言者、野坂昭如の東京昨日今日明日。うつつか幻か、郊外の小さな公園のベンチに坐る場所柄につかわしくない粧いの女、その数奇な身の上話に耳をかたむける、これもまた身をもてあまし気味の私。時は春。東京にはさまざまな世間があるのだ。「家庭篇」から始まり告白的「私篇」、そして巨大都市・東京の行末を暗示する「山椒媼」まで饒舌かつ猛スピードで語られる14の断章。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハチアカデミー
5
C+ 頁を開けば思い出すこの文体! 国宝級名人芸・野坂節を満喫。男がいて女がいて、出会ってまぐわって、子が産まれる。人生はそのぐらいシンプルなもの。そこから、哀憐の物語を生み出すことが出来る魅力的な作家である。東京を舞台に、そこで生きる人々の人生を描く短編集。市井の人々にまじり、自らの生い立ちについて語った「私編」、桜庭「赤朽葉家」が20頁に圧縮されたかのような「ルーツ編」、そして「純愛編」が特に良い。翻訳不能の文体を操る作家として、もっと真面目に言及、研究されるべき。第三の新人よりも凄いぜNOSAKA!2012/04/15
rakukko
2
88-9年の作品、私が僅かに読んだ作の中では最も新しく、期待薄めであったが非常に面白かった。淡々としかし怒涛のあの文体でサンプリングされた現代都市に棲む人々の人生・世代13篇が書き連ねられている。ホントかよと疑って読んだ「私編」で書かれてる内容は巻末の年譜とwiki通りで驚いた。巻末には著書目録も付いてるし解説は町田康だし本編以外も充実。2014/11/19
カラシニコフ
0
野坂昭如氏が描いた、東京の姿。想像と違った。2017/02/07
いたち野郎
0
【速読】東京のモノ・消費社会みたいなのがにおってくる少作品いろいろ、でして、それは都会の生活とイコールでもあると思うんですが、そこに戦争の記憶をぶち込むと情緒の変遷に厚みが増すんですね。これは野坂昭如がずっと前から書いてきたことの延長なのかもしれませんが、友情編は富山から状況し都会的流行を痛感した藤子Fさんの大人向け作品にも通じる、なんてことも思いました。で、この文体を迂回的でありながらきびきびした文章、と町田康が書いてまして、このただ一言だけどもすごいなと思いますね。2015/10/25
笠井康平
0
豊かな暮らし、寂しい気もち2014/05/11