内容説明
イタリアの大貴族デル・ドンゴ家の次男ファブリスは“幸福の追求”に生命を賭ける情熱的な青年である。ナポレオンを崇敬してウァテルローの戦場に駆けつけ、恋のために殺人を犯して投獄され、獄中で牢獄の長官の娘クレリア・コンチと激しい恋におちる……。小公国の専制君主制度とその裏に展開される政治的陰謀を克明に描き、痛烈な諷刺的批判を加えるリアリズム文学の傑作である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
333
物語は1796年5月のナポレオンによるミラノ入城から書き起こされる。そして、我等が主人公ファブリスが憧れのナポレオン率いるフランス軍に馳せ参じてワーテルローの戦いに赴くのが1815年。ファブリスは弱冠17歳だ。まだリソルジメント以前のことであり、したがってイタリアは小国が乱立していた。パルム(パルマ)は、そうした国の一つである。上巻では、物語の中核をなすクレリアとの恋は予兆だけで、もっぱら、時代背景の定位と、ファブリスの性格造形が主な内容だ。それにしてもファブリスの熱情というか、なんとも血の気の多いこと。2016/05/31
のっち♬
128
若きイタリア人貴族ファブリスはワーテルローの戦いで負傷し、叔母に担がれて出世への道を歩む。冒頭の戦場描写は混沌とした空気が伝わってくる迫真のカメラワークで、本筋との乖離を気にさせない充実ぶりに著者の自信が窺われる。上巻では「何でも簡単に考える」無垢なファブリスの発作的な衝動が至る所で事件に発展する取り留めのない挿話が主軸になるが、感受性の豊かさと美貌でいとも簡単に女性たちを惹きつける彼の存在には著者の経験のみならず、願望や夢も多分に反映されているのだろう。レトロな人物造形が劇のような質感をもたらしている。2018/04/10
優希
92
波乱万丈の半生の幕開けには相応しい形で物語が始まったと思います。「幸福の追求」に命をかける情熱がナポレオンへの憧れとなり、ワーテルローの戦いに駆けつけるファブリスの熱さを強く感じました。恋のためなら殺人も犯せるという意識が凄すぎる。投獄されてまで激しい恋がまとわりつくのが何とも言えません。情熱の国・イタリアが舞台であることがファブリスの情熱の象徴なのかもしれないですね。下巻も読みます。2016/11/19
syaori
67
19世紀初、小国家が分立するイタリアが舞台。本書は作者の”青春回想ー書くことによって楽しかった過去を再生しようという幸福なリズムに魅力の源泉がある”そうですが、確かに何と幸福な小説なのでしょう。物語は戦争、亡命、決闘に華やかな宮廷の政争と波乱に満ちているのですが、しかし主人公ファブリスの心は故郷の自然のもたらす甘い憂愁と、その思い出と共にある「生涯の入口」で感じた幸福を信じていて、そこから生まれる「素朴で優しい喜びの表情」がこの物語を詩的で幸福なものにしているように感じます。彼の青春の彷徨を追って次巻へ。2020/06/19
NAO
65
ミラノに入場したナポレオンの姿にほれ込み、熱狂的なナポレオン崇拝者となった若きファブリス。直情径行なままに戦場に駆け付けたワーテルローの戦いが負け戦でこれでもかというほどの様々な経験を積みながらも、消えることのない情熱を持ち続けるファブリスの情熱に圧倒される。それにしても、公爵夫人といい、モスカ伯爵といい、甘ちゃんのボンボンファブリスをちょっと買いかぶりすぎ、フォローしすぎではないか、とも思う。2017/08/28
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