内容説明
結納のため、札幌に向った鉄道職員永野信夫の乗った列車は、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れて暴走し始めた。声もなく恐怖に怯える乗客。信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた……。明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らを犠牲にして大勢の乗客の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、生きることの意味を問う長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
539
カトリックの神髄は「沈黙(遠藤周作)」、プロテスタントの神髄は「塩狩峠(本書)」ということでチャレンジしました。テンポがとても良くページを捲る手が止まりません。中弛みしそうなタイミングで主人公を成長させ、それに合わせて神学的要素を増やしていく技法には感服しました。良い意味で主人公と一緒に成長しているような感覚に陥ります、つまり代理体験を自然とさせられます。本書を通じて3か所で目を拭く羽目になりましたが、感動や美談だけではなく、哲学書でもあると思いました。良書ではないかと思います。2022/12/03
遥かなる想い
446
自らの命と引き換えに、大勢の乗客を救った 鉄道職員永野信夫の話。実話に基づくこの小説は涙せずには読めなかった記憶がある。三浦綾子がつむぐ小説は『氷点』を始め心に痛い話が多く、心を洗いたい時に読んでいた…2004/01/01
ちくわ
383
新潮の100冊に毎年選出されており興味が湧き読む。前半は信夫の半生だが、各話が独立した寓話のようで教訓に溢れている。後半の北海道編…自分はすぐ泣いちゃう(笑)ので少しずつ頁を捲る。愛、信仰、献身、そして永遠の別れ…大号泣!実話がモチーフなので降水量三倍だった。 本作をキリスト教賛美のプロパガンダだ、ご都合主義だと揶揄するのは簡単だが、禁断の側面を持つ宗教や信仰心を文学として美しく織り込めているのは凄い。一方でキリスト教の精神は『愛』なのに、欧米諸国は何故戦争を繰り返すのか?世の中はそう単純では無いようだ。2024/09/12
Nobu A
314
三浦綾子著書5冊目。68年刊行。敬虔なクリスチャン作家だからこそ描ける小説。明治42年にタイトルの場所で起きた鉄道事故で殉職した実在の人物、長野政雄をモデルに構成された物語。私自身、自称無神論者(本来神社参拝はおろかクリスマスも祝わない人を指すから似非論者)だが、社会は人と人が寄り添って生活している世界だとは認識している。良好な人間関係構築の大切さ、特に苦難に陥った時にどう振舞うべきかを本書は教えてくる。年を取ったせいか、キリスト教に憧憬の念を抱いた。と言うか、他者を理解するのに宗教は避けて通れない。2025/02/22
再び読書
276
自らの命をかけて、人を守った高貴な心に胸を打たれる。
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