内容説明
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独特の物語性と圧倒的な音楽の力で聴く者の心を激しく揺さぶるワーグナー作品を『ニーベルングの指環』を中心に紹介しながら、音楽の面からだけではなく、文学やジェンダー、戦後の受容史などの視角からも解析して、その魅力と問題性を多角的に問い直す。
目次
はじめに 編著者
第1章 戦後日本のワーグナー受容史 金子建志
私的回想
グルリット指揮の『タンホイザー』──二期会初のワーグナー挑戦
『さまよえるオランダ人』の日本初演
『ワルキューレ』の日本初演──大阪フェスティバルホールでのバイロイト音楽祭引っ越し公演
『パルジファル』の日本初演
『ラインの黄金』の日本初演、二期会の『ニーベルングの指環』のスタート
朝比奈隆指揮、新日フィルの、コンサート形式による『ニーベルングの指環』初演
日生劇場の『トリスタンとイゾルデ』──バイロイト祝祭管弦楽団的試み。外国人歌手と日本人歌手のダブルキャスト
N響に名誉指揮者たちが残したもの
モーリス・ベジャールのバレエ版『ニーベルングの指環』
飯守泰次郎指揮、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団によるセミ・オペラ形式の『ニーベルングの指環』
第2章 各地の『ニーベルングの指環』演出 寺倉正太郎
一九五〇年代
一九六〇年代
一九七〇年代
一九八〇年代
一九九〇年代
第3章 ワーグナーとイギリス──ヴィクトリア朝にたどるワーグナー受容と解釈の淵源 高橋宣也
ピーター・ホール演出の『ニーベルングの指環』
ワーグナーのイギリス訪問
ワーグナーとモリス
ラファエル前派から世紀末へ──唯美的受容
ショー──社会批評的受容
新たなファンタジー化の可能性
第4章 絶望の淵をのぞき込む──リチャード・ジョーンズ演出『ニーベルングの指環』(一九九四─九五年、イギルス・ロイヤル・オペラ)について 森岡実穂
リチャード・ジョーンズ演出の特徴
ジョーンズの『指環』の提示する問題
『ラインの黄金』(一九九四年十月)
『ワルキューレ』(一九九四年十月)
『ジークフリート』(一九九五年三月)
『神々の黄昏』(一九九五年十月)
第5章 バイロイト音楽祭再訪──二〇〇二年 寺倉正太郎
最初の訪問──一九八七年
三つの『タンホイザー』
バイロイト=ベルリン枢軸をめぐる政治状況
新国立劇場とバイロイト
ユルゲン・フリムの『指環』演出
ワーグナーを今日上演することの意味
第6章 ロック・マニアからワーグナー好きへ 下口 努
映像を使った作品
ブリット・ポップの真っ只中、リチャード・ジョーンズの登場
コンペティターの設定および分析
コヴェント・ガーデンの『ニュルンベルクのマイスタージンガー』
シュトゥットガルトの『ニュルンベルクのマイスタージンガー』
ENO、野外ロック・フェスティバルに登場
第7章 Hey Man, I Dig Your Point, But...──キース・ウォーナーのトーキョー・リング 山形浩生
第8章 『ニーベルングの指環』と『永遠の王』 寺倉正太郎
完結した新国立劇場の「トーキョー・リング」
繰り返される「悲劇」
「かつての、そして、これからの王」
第9章 ヤン・ファーブルの『タンホイザー』──ワーグナー演出の現代性とは 大山康生
ヴェーヌスとエリーザベトをめぐって
貴族(権力)と巡礼者(罪人)をめぐって
罪人=道化について
ヤン・ファーブルの『タンホイザー』に表象されたもの
ほか