内容説明
中原中也、内村鑑三などの思想と行動をアウトサイダーの名のもとに解明し、近代日本におけるインサイダーとは何かを説いた名著。〈解説〉高橋英夫
感想・レビュー
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nobody
16
漢詩は白文のまま。「アントロギッシュな・メタフィジック」といった言葉遣い。用を成さぬ「従って」。「序(ついで)ながら」の頻出即ち論脈の破断。逆説。一々「結局こう言いたいんだな」と咀嚼する労を要する高踏的言辞、同伝で解説抜きの晦渋な引用。文芸評論と列伝の混淆。「泡鳴は一挙にして宇宙と生命の理の交錯する場を直観した」と言われても。「ここには論理なんかない」、その6行後に「ここに現れているのが、鑑三独特の竹を割ったような論理の迸出である」。近代日本には正統即ち反逆の対象がなかった、敢て言えば立身出世主義と。2018/05/06
がんぞ
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「アウトサイダーとはビジョンを見る人である」コリン・ウィルソンの定義と同じくはじまって、一般的には文筆家であっても「作家」とされない内村鑑三などを文芸の文脈で解読する。ことに著者が愛情を注ぐのは親戚ということもあってか、共産党に裏切られ「一切の政治活動をやめる」「選挙など好きな人は好きだが私は嫌で堪らなかった」と晩年の避難のため悲痛な声明をした(共産党から見れば「転向」)河上肇である。はたして文筆によって表現される《思想》は時代を動かしてきたのだろうか。そうでないとすると欧米帝国主義思想の生徒に過ぎないが2012/07/18
v&b
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「大杉栄」と「中原中也」、「内村鑑三」の章を。コリン・ウィルソン『アウトサイダー』にインスパイアされた本。もちろん熱量は本家に劣るし、グルメ批評的なところも目立つ。けれど、「文学」(「文学者」)が広い世の中のごく一部を占めるに過ぎないという感覚がつたわってきて、好感をもった。一部の文学者の傲慢とその文体の万能感に食傷気味だったので。2012/06/02