内容説明
小高い丘の家に住まう晩年の夫婦の穏やかな生活。娘や息子たちは独立して家を去ったが、夫々家族を伴って“山の上”を訪れ、手紙や折々の到来物が心を通わせる。夜になれば、妻が弾くピアノに合わせ、私はハーモニカ……。自分の掌でなでさすった人生を書き綴る。師伊東静雄の言葉を小説作法の指針に書き続けてきた著者が、自らの家庭を素材に、明澄な文体で奏でる人生の嬉遊曲。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
90
書き綴られているのは何でもない日々の身辺雑記。特に肩の力が抜けた文章で、特に工夫がなされているようにも感じないし、意外性もなく感興を誘う事件もこれといってない。しかし不思議とダラダラした感じもないのだ。日々の様子が淡々と事実だけで描写され、庄野氏やその他の人物の心の動きは取り立てて現れない。生きていくうえで必ずつきまとうであろう苦しみや哀しみ、周りから感じる悪意、その他諸々煩わしいと感じるものが見事に削ぎ落とされた文章がそこにある。あるのはただ文章のみなのだ。2018/04/12
まど
19
晩年シリーズ4作目。おなじみのメンバーが登場したときの丁寧なエピソード紹介も「知ってる知ってる」と常連感覚で読む安心感。一日の終わりに少しずつ読むと、繰り返し続く同じようなエピソードが凪いだ海のように疲れた心をリセットしてくれて心地よいです。2011/11/22
ぞしま
16
『夕べの雲』に次いで。あの長女と兄弟二人が(名は変われど)お母さんお父さんになってる‼︎と思い、後日談的に序盤は楽しく読んだが…中途で息切れ。自然描写、老いと若きの足どり、食事、贈り物、催し、ピアノ・エチュード、唱歌……など日常を成すものは、緩やかながらも透徹したまなざしに支えられているが、考察を放棄したかのようなある種の皮相な感情吐露にとどまる。この老成の域とでも呼ぶべ境地は今の私には遠い。本作は庄野潤三の作品を隅々まで読んだ読者に用意された至福の贈り物なのかもしれない。読後そんな気分になった。2018/02/07
ステビア
16
穏やかな日常が描かれる。ふつうにいいんだが、「静物」を超えるものではない。2014/10/18
7kichi
6
家族について考えさせられる。2009/06/26
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