内容説明
長年対面しつづけた宗教的課題を取り上げ、“現代の聖書”として世に問うべく構想を練りながらも絶筆となった現代小説「おごそかな渇き」。ほかに“下町もの”の傑作「かあちゃん」「将監さまの細みち」「鶴は帰りぬ」、“武家もの”の名品「紅梅月毛」「野分」「蕭々十三年」、“こっけいもの”の「雨あがる」、“メルヘン調の「あだこ」「もののけ」と、周五郎文学のさまざまな魅力を一冊に収めた。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
125
没後50年の「山本周五郎展」を先週観に行った。表題作の【おごそかな渇き】は、志半ばで倒れた氏の絶筆作品だと知り、急遽読みたくなった。福井県の谷合の貧困農村を舞台に、歴史的に根深く残る宗教争いを題材に描いた現代小説。この遺作を含む10短篇集で、読み応えがあります。武家モノ、滑稽モノ、お伽噺的な作品など周五郎の持ち味―懐にカイロを抱いた時のような、じんわり温かさが滲みでてくる楽しめる一冊です。面白いです。2017/11/13
優希
62
珠玉の短編集だと思います。それぞれの物語に様々な魅力が詰まっていました。絶筆になった作品もあり、どのような物語に仕上げたかったのか興味があります。心が浄化されるような気分を味わいました。2022/01/07
kawa
55
今から40年以上前発刊の渋茶色の古々米の如き佇まいの図書館本。しかし中身の味わいは、一粒一粒が際立ち炊き立て新米のような旨み滋味溢れる充実の人情小説佳作集。いやぁ、山周先生の真骨頂ここにあり、恐るべしですね。表題作は「現代の聖書」を描きたいとする絶筆作、他作品とやや手触り感が異なるが、氏の新たな境地を堪能させていただきたかったと予感させる作品で未完が惜しい。 2020/05/04
たつや
54
濃厚な10編の短編集でした。「雨あがる」は映画の内容と同じ箇所と違いもあり、そういう部分を考えて読むとさらに味わい深い。表題作は現代の聖書と言うことですが絶筆で残念です。完成してたらと想像すると、考えます。何度も読みたくなる名作揃い。また読みたい。2017/06/29
タツ フカガワ
43
全10話の短編集。吝嗇で知られる長屋の一軒に盗みに入った男がその家の母親に諭されて一緒に暮らすことに。以来「おばさん」と呼んでいた男が最後にそっと呟く「かあちゃん」(作品名でもある)という一編は何度読んでも涙がこぼれてくる。そのほか「将監さまの細みち」「鶴は帰りぬ」「あだこ」も泣かせる名作です。2020/09/26




