内容説明
独りであること、未熟であることを認識の基点に、青春を駆けぬけていった一女子大生の愛と死のノート。学園紛争の嵐の中で、自己を確立しようと格闘しながらも、理想を砕かれ、愛に破れ、予期せぬうちにキャンパスの孤独者となり、自ら生命を絶っていった痛切な魂の証言。明るさとニヒリズムが交錯した混沌状態の中にあふれる清冽な詩精神が、読む者の胸を打たずにはおかない。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こーた
290
カフカや太宰にも似た絶望をかんじる。本を読み、詩を書くことでそれを克服しようとするけれど、内側に籠ってうまくいかない。必要なのは外側だったのかもしれない。恋人との接触。それは身体を伴って、外部とじかに繋がる。そとがわかれば、うちもわかる。悩みの幾つかは、歳をとれば自然に解消されるものもあるけれど、ずっと消えない生きづらさも残る。まるでディストピア世界の住人が書いた日記のようだ、という錯覚に幾度も襲われる。大人たちはいつだってロクでもないし、狂気の幻想に充ちたこの社会は生きるに値しない。⇒2019/11/09
青蓮
122
読友さんの感想より。独りであること、未熟であること、これが私の二十歳の原点であるーー学園紛争真っ只中を生き急ぎ、駆け抜けて行った高野悦子さんの言葉が深々と胸に刺さります。理想を掲げ、苦悩し、もがきながらも一生懸命に生きた彼女の姿に目頭が熱くなる。自ら命を絶ってしまったことが非常に残念でならない。もし彼女と同じ時代を生きていたら何か優しい言葉をかけてあげたいと思う。それにしても社会的、政治的な面を見ると当時と何ら問題が解決していないことに驚く。と言うか、寧ろ深刻さが増してるように思えてならない。2018/01/06
新地学@児童書病発動中
120
読み返して何とも言えない気持ちになった。本書で著者が問いかけようとした現代社会の問題点は、21世紀になってもほとんど解決していない。沖縄の問題、人間疎外、大学教育の歪み、政治の腐敗などむしろ当時よりひどくなっているのもかもしれない。それを考えると暗い気持ちになってしまう。しかし、真っ当な感受性を持った高野さんのような若者は現代にも多くいるだろう。そんな人たちをこの本は励ます力を持っている。自ら命を絶ってしまったことは残念だが、『二十歳の原点』は誠実に生きようとする人達のための心のこもった贈り物だ。2017/12/17
ゴンゾウ@新潮部
109
高校時代に読んだ。私の時代は学生運動は殆ど無くなっており一部の学生達が活動していた。彼女の日記は平和な時代の自分達にはとても衝撃的だった。国家に大学に対し格闘する高野さんの心の叫びが聞こえてくる。他人との比較でしか自己を規定できないもどかしさ。愛する家族からの訣別。失恋が絶望と諦めに変わる心の動きが生々しい。死を選択してしまったことがとてもとても哀しい。2017/01/18
chiru
105
ページをめくると最初に、写真で微笑む彼女に会う。『二十歳と六か月』で自ら命を断った高野悦子さんは、綺麗ではにかむ笑顔が可愛らしい普通の女の子。でも日記には『独り』というフレーズが何度もでてくる。彼女は常に孤独と未熟さからの離脱を夢見ながら、ずっと裏切られてきたように思う。好きな人に。闘争に。理想に。自分自身に。心が掻き乱れてうまく言えないけど、言い訳も開き直りもしなかった悦子さんは、強く優しい女性だったと思う。「辛く苦しい時間は、永遠じゃない」という言葉を思い出しながら、ページを閉じました。 ★52019/07/08