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内容説明
著者はのべ13年間、1000人の「帰国子女」を指導する過程で、発音はぺらぺらでも授業を理解する英語力を身に付けられなかったり、日本語を喪失してしまったりする悲劇を目の当たりにした。この経験をふまえて早期教育の現場をルポし、警鐘を鳴らす。また国際社会を生き抜くために必要な能力を問い、それを養う具体的方策を提案する。
目次
第1章 在米日本人子女と過ごした一三年
第2章 セミリンガル化する子どもたち―母語喪失の危機
第3章 バイリンガル幻想を検証する
第4章 日本で進む早期英語教育の実態
第5章 外国人との「対決」が育む国際感覚
終章 親が留意すべき10のポイント
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gondan
9
★★★★★ 華やかなバイリンガルの陰には、日本語にも英語にも適応できずに潰れていった子どもたちがいた。小学生レベルの言語能力しか獲得できなかった彼らを差別的にセミリンガルと呼ぶらしい。いきなり英語のみの環境にほおりこまれた彼らは、「sink or swim」つまり、泳ぐことができなければ(英語が喋れなければ)沈め、というサバイバルに直面した。衰えるわが子の日本語能力を目の前にして、おろおろするしかない親の悲しさ。13年間の塾教師経験から、筆者は、問題は英語ではなく母国語(日本語)にあると指摘する。2012/02/26
Nobu A
8
大津先生本で紹介。早期英語教育反対論は結構な数読んできたが、本著は他著と一線を画す。米国滞在13年、学習塾で千人程の日本人に国語を教えた著者。親のバイリンガルへの期待とは裏腹に多くの子供達の葛藤を間近で目にし、教育者として英語との向き合い方を論述。実体験もさることながら様々なデータも揃えて考察している点が説得力を増す。早期教育に決して反対ではなく、その際の盲点や提言も叙述している。「国際感覚」とは何ぞや。親の読み聞かせの重要性。この2点が特に勉強になった。強いて言えば、データが若干古い。2004年初版。2022/01/09
takao
3
ふむ2021/07/20
Kenichi Shoda
3
幼児期から英語を教えるメリットがあるのかどうか気になり一読。 結論としては、両親が日本人で、生活環境が日本である以上、幼児期から英語に親しむのはアリでも、身に着けられるかどうかは、はなはだ疑問と感じた。 教育費、環境、本人の情熱、これらを10年以上かけて維持するのは、親側も相当覚悟がいる。一方で、筆者は様々な英語教育法や、日本の学校での取り組みも紹介してくれているので2004年の本ながら参考になった。 親が留意すべき10のポイントでは、英語のみならず、本の読み方や、質問の仕方などが参考になる。2016/02/08
ぶるっち
3
久々に出会った最高の一冊。表面上は「幼少時からの英語(バイリンガル)教育」「日本のバイリンガル幻想」に関する警鐘ですが、実は「教育・子育て全般」に対する非常に意義深い提案が多数なされています。「子どもの教育」という名の「親のエゴ」に陥らないために何が必要か、いろいろと考えさせられる一冊でした。英語教育に興味がある方はもちろん、そうでない方も一読の価値は十分にあると思います。2011/05/14