内容説明
山の民「マタギ」に生まれた青年・松橋富治は、身分違いの恋が災いして秋田の山村を追われ、その波乱の人生がはじまる。何といっても圧倒されるのは、山のヌシ・巨大熊とマタギの壮絶な対決。そして抑えつけられた男女の交情の色濃さ。当時の狩猟文化はもちろんのこと、夜這い、遊郭、炭鉱、男色、不倫など、近代化しつつある大正年間の「裏日本史」としても楽しめる冒険時代小説です。長篇小説ならではの面白さに溢れた、第131回直木賞受賞作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
162
直木賞】マタギ。猟師。日本氈鹿と熊。山を旅する男達の淡々とした物語。危険、詐欺。自然とも人間とも戦う。獲物を仕留めた感動を描写するだけでなく、自然を描写するだけでなく、猟師の心を描写している。3つが均衡していて、話が流れていく。東北の厳しい山々と、温泉地が舞台に。分かり易い説明。2014/03/17
初美マリン
118
自然にいかされ自然を愛し一体となるマタギ、女性の強さが心に残る。2019/07/11
Shoji
79
とても重苦しい。 胸が締め付けられるほどの苦しさを感じた。 自然を前にしたら人間はどれだけ小さな存在なのかを知らされた。 すさまじいばかりの生への執着。 貪りあうセックスさえも自然の摂理と思えた。 「邂逅の森」という書名。 自然界では「偶然」というものは存在せず、すべての事象は「必然」の積み重ねなのである。 必然の積み重ねが「邂逅」させるのだと思った。 良書だ。 2016/11/13
R
77
旅マタギを扱った小説。男の一生の物語ともいえそうな波乱万丈さもあり、非常に面白く読めた。大正から昭和にかけてくらいの物語で、その頃の市井風俗も垣間見えるところが多くて興味深い。マタギ独特の信仰めいたものが、結局本当に存在するものだったのか、それはさほど重要ではないながらも、人を縛る、あるいは導くものとなっているのが面白かった。男女の妙も見事で、男都合の話というか、女性同士の機微がまったくわからないという描写が秀逸すぎて、とてもよかった。2024/03/26
にし
70
大正から昭和初期の東北に住むマタギの一生。秋田から山形へ全編に流れる東北弁の凄味と凍てつく空気感。緊張と緩和が繰り返され息つく暇を与えないマタギの生業に魅せられてしまった。厳かな山の掟に従う男衆を支える健気な女、男女の絶妙な間合い。この物語のなにもかもに血が騒ぎました。2014/07/12