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内容説明
ギリシア悲劇の起源を問題にする体裁をとりながら、ニーチェの内部に渦巻いていたあらゆる主題が未分離のまま投げ込まれ、強い衝迫力をもってせまってくる。今日なお「問題の書」。
目次
悲劇の誕生
自己批判の試み
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
19
こんなの学術論文として提出したらそりゃ干されるでしょう!若きフリードリヒの向こう見ずがすごいです。ギリシア悲劇に大きな二つの要素があるのを指摘したのはつとに有名な話だが、ディオニソス的なものとはつまるところ理由律の否定、世界には理由というものがなくすべてはデタラメにできているという世界観である。それを表現したのが音楽であり、ソクラテス以降音楽の位置は理性により退かれていくという見立てがニーチェの中にある。論証が全くされないのも「理由率の排除」に忠実たらんとしたためだろう。必読の一冊。2018/03/03
ころこ
15
ニーチェの処女作であり、数少ないかなりちゃんとした文章です。指示語が少ないのは訳者の訳文が良いのか、ニーチェの文章が良いのか分かりませんが、岩波文庫よりは本書でしょう。学術論文のはずが、全く評価されなかった理由は明らかです。太陽と造形美と理性の象徴であるアポロン的な表と、夜と音楽と陶酔の象徴であるデュオニソス的な裏では、デュオニソス的なものがより本質的ですが、両者が『兄弟の絆』となることが本来のあり方だと言います。ところが、理性を重んじるソクラテスの影響により両社の関係は崩れ、神話が崩壊します。このドイツ2017/11/27
Gotoran
14
(『ニーチェ入門』(竹田青嗣著)で概観した上で)ニーチェ思想の詳細を知りたく、処女作の本書を。訳者も云っているが、難解で当惑するも興味深く読め知的好奇心が満たされた。ギリシャ神話にて、造形芸術をアポロン(理性)に、音楽をディオニュソス(情動)と見做し、悲劇(劇文学)を2つの側面から、両者の性質を合わせもった最高の芸術(文学)と説く。根源的一者をディオニュソス的なものとし、その根底にルター、カント、バッハ、ベートーベン、ドイツ精神が繋がると。また科学的ソクラテス主義の限界を論証し、[コメへ]2012/11/24
ひかり
7
つい最近、欲求に駆られて哲学ノートを作ったのだが、その始まりに、自分が抱えている問いを三つ立ててみた。そのうちの二つの問題の核心に触れるような書物がこの『悲劇の誕生』だった(たまたま悲劇のことが知りたくて手にとっていたのだが)。なのでノートの一回目はこの本についてまとめる事にした。私は高校生の時キリスト教会の家から家出してきた。キリスト教は生の妨げになると感じてそういう行動に至ったのだがその傍らに'音楽の世界'の存在するという強い感覚があって、それがいつも哲学的な疑問を喚んでいた。2020/12/10
shimashimaon
6
概説書を除き、ギリシア悲劇はソポクレス『オイディプス王』、ギリシア哲学はプラトン『ソクラテスの弁明・クリトン』しか読んでいませんが、ギリシア神話に関しては阿刀田高氏のエッセイが役に立ちましたし、訳者の註解も丁寧でわかりやすいので、面白く読むことができました。そして何よりもその主張に大いに納得したのです。ただギリシア悲劇は言葉(本)で味わうものでなく劇で感じるものだと思いました。「自己批判の試み」では本格的なキリスト教批判を垣間見ましたが、辻邦夫氏の描くユリアヌスのようでした。ショーペンハウアーも読みます。2022/12/11