内容説明
なあに、明治維新なんてえものはね、つまり薩長たち雄藩と徳川との争いさ。いまのような文明開化の世が来たのも、そいつは時勢というやつでね。つまりは日本国民がえらいのだよ──いたずら好きの腕白小僧が、父の意に反しひたすら剣術の稽古にあけ暮れて十年。折しも幕末の動乱期、永倉新八は剣道の快感に没入した青春の血汐をそのまま新選組に投じた。女には弱いが、剣をとっては近藤勇以上と噂された新八の、維新後におよぶ生涯を、さわやかに描ききった長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
s-kozy
85
池波御大が描く新選組副長助勤・永倉新八の生涯。この人、大正年間まで生き延びたんですね。なので新選組の栄枯盛衰、幕末の動乱の中で果たしたその役割、維新後の日本の姿などなどが丁寧に描写されている。「明治維新なんてものはね、つまり薩長たち雄藩と徳川の争いさ。いまのような文明開化の世が来たのも、そいつは時勢というやつでね。つまりは日本国民がえらいのだよ」と新八に語らせており、池波史観がよく分かる。あまり時代小説、歴史小説に慣れていない人にもオススメできる一冊かと思います。2016/12/09
とも
81
新撰組二番隊長・永倉新八の生涯を描いたお話です。 永倉新八については新撰組でも剣の腕前は随一、数少ない生き残りぐらいの知識です。 読み終わった今浮かぶのは「孤高」という言葉。それが「江戸っ子っぽい」になるかはわからないけど気が合えばつるむし合わなくなったら道を分かつ。自分を貫くけど根底に情が流れてるといった感じ。何となく晩年の威勢のいいおじいちゃんな永倉新八がすきです。 今までのイメージが少し変わった人物もちらほら。視点によって世界は見え方が違うんだなぁとしみじみ感じました。2018/08/04
アルピニア
77
新選組二番隊長「永倉新八」の視点で描かれた幕末と維新。新八は、信念は持っているが根っからの江戸っ子でこだわりはない。それが矛盾するようでいてうまく収まっているのが不思議。こだわらないから、人をとことん憎んだり嫌ったりできない。その分、敵に対しても冷静に判断しているように感じた。新八は言う。「明治維新というのはね、つまり薩長たち雄藩と徳川との争いさ。いまのような文明開化の世が来たのも、そいつは時勢というやつでね。つまりは日本国民がえらいのだよ」池波さんの描く新八は、剣一つでかろやかに生き抜いた男という印象。2019/02/18
森オサム
77
著者初読み。永倉新八の視点から見た新選組を描いた作品。新選組は最終的に悲劇的な終焉を迎えますので、扱った場合どうしても悲壮感が漂います。その点維新後大正時代まで生き延び、かつ気性のサッパリとした主人公を選んでいますので、読み易くて凄く楽しめました。本作を読んで永倉新八のファンにならない人は居ないんじゃ無いかな?最後までかっこ良い、作者の愛情の深さがこう書かせたのでしょうねぇ。まあ、歴史的事実にもその登場人物にも色々な捉え方が出来るのでしょうが、幕末と言う時代の一つの見方として、是非おススメしたい良作です。2016/12/01
ポチ
76
幕末を戦い抜き大正まで生きた、永倉新八の生涯を書いた作品。やっぱりいい漢だなぁ(^^)2017/01/31