内容説明
われわれがこれまで、人類の過去の生き残りと教えられてきた人々――彼らのもとの世界の廃墟の中で、今現在「かろうじて存続する」ことを余儀なくされている人々――が、思いがけず、われわれ自身の未来の姿として現れてきます。
クレナッキは言っています。私たち先住諸民族は、五世紀にわたって西欧の血なまぐさい「人道主義」に抵抗してきた。私が心配しているのは、むしろあなた方白人のことだ。これから起こることに対して、あなた方が耐えられるか、私にはわからないから、と。
――ヴィヴェイロス・デ・カステロによる「あとがき」より
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
44
どことなく消化不良のままでいた、自分自身の価値観・思考の整理する方向性が垣間見える。講演の書き起こしが中心であるが、その口調・文体は、決して激しいものではないが故に、却って思索に働きかけられてくる。グローバルだけではないが、一つの価値観を是とすこと自体に、違和感を感じているので、背中を押された気持ちになる。それは、極々一部にだけフォーカスし、そこだけへの施策に明け暮れる最近の世相に対して感じることでもある。2022/10/09
Sakie
14
物語は人を動かす。その文脈で言えば、『私たちはひとつの人類である』という物語に私たちは縛られているのではないか。アメリカや西欧諸国に過剰に迎合し、同じ規範によって行動しなければならないとばかりイデオロギーを取り込んできた。だから、著者の"ひとつの人類"でいることをやめようという提言には不意を突かれた。多様性を叫びながら、自分たちの意に沿わない少数民族の多様性を踏み潰し、収奪するやりかたには否を。まだ残っている自民族の智を、人類の均質化から注意深く拾い守る意志が、いつか世界の終わりを先延ばしする力となる。2024/03/08
PETE
3
人類という概念を創造し、私たちがそれを僭称することで、先住民の生きる場所は必然的に開発のために収奪されていくという告発。 これは、国民という概念による地方からの収奪という問題にもつながる。2022/06/05
Go Extreme
3
世界の終わりを先延ばしするためのアイディア: アメリカ大陸先住民展ーブラジルの先住民映画の歩み 夢と地球について: リスボン・市立マリア・マット素劇場 過去と現在ーリスボン、2017年イベロアメリカ文化首都 先住民にまつわる諸問題ー生態学・地球・アメリカ先住民の智恵 私たちという自称人類: 舞踏カンファレンス「アントロポセナス」 不穏な問い2022/06/02
Kan T.
1
「私たちはそれぞれの違いによって、互いを惹きつけ合うことができる[…]そしてそのことが、人生の道標となるはずです」[p.29] 良かった。たとえばアルトゥーロ・エスコバルのDesigns for the Pluriverseもこのような本とあわせて読まれてほしい。 ボサノヴァ本の翻訳書やライナーノーツなどなどを通じて訳者は存じ上げていたが、そういう方がこういう本を訳しまた充実した訳者解説を書いているというのも、なんだかアメリカ大陸的な知的活動のようで良い。2022/08/28