大人の本棚<br> 小さな町で

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大人の本棚
小さな町で

  • ISBN:9784622080459
  • NDC分類:953

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内容説明

フィリップは早すぎる死の一年あまり前から、パリの大新聞ル・マタン紙に短い物語を書いた。依頼したのはのちに劇作家になるジロドゥーである。「わずかな枚数のうちに人生の断面が、いやときには一つの人生がみごとに描き出されている。…貧困、不幸な恋、病気、老年、死――こうした暗い題材を扱いながらも、フィリップはどこかにとぼけたようなおかしみ、人生そのものの諧謔をしのびこませるのを忘れない。そのエスプリというか奇妙なやさしさ、人生を低い視点から、狭く限って、鋭く眺める、そこが日本人の感受性、美意識に合ったのではないか。」(訳者)小さな町セリイを舞台にした短編集28篇の全訳に『朝のコント』からの5篇を付した改訳決定版。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

kana

31
小さな町の、普通なら決して物語に名前付きで出てこないような人達の日常にスポットをあてた連作短編集。子どもから大人まで、乞食から神父まで、その目線は分け隔てなく注がれ、同じ町をモチーフにした風景画をみているような感覚を覚えます。その素朴さは時に美しく、ありふれているようで、1つとして同じでない。連作として描かれることで、その町に流れる空気が読み手の私にもしみ込んできて、独特の慣習や価値観に馴染んでいくのです。彼らの死を描いた「素朴な人々の死」「ある生涯」、子供達の小さな冒険を描いた「箱車」が特に好き。2014/08/02

ぱせり

14
なんとなく覚えがあるような光景は毎日どこかでひっきりなしに見られるけれど、起こったその瞬間を取り出して仔細に眺めてみれば、それは、どこにもない一回限りの出来事で、日常は、奇跡的な瞬間の積み重ねだったよ、と思う。そういう短編集。シニカルな描写で、冷めた笑いを誘うものが多い。『火口屋の娘』『老人の死』『お隣同士』など、好き。 2015/12/22

春生

7
1800年代後半、セリイというフランスの小さな町を舞台に描かれた短編集。題材は貧困、殺人、病気など、ドラマチックでもない、よくありそうな重い話が多いのに、ひょうひょうと描かれていた。こういう嫌な人いるなと思う人物が数多く登場し、人間って変わんないだろうなあと感じさせられる。一番印象に残ったのは、『アリス』末っ子で甘え放題の子が、弟が生まれて、親の愛情が薄くなったことをなげいて、絶食して死んでしまった女の子の話。2010/02/05

timeturner

3
フランスの小さな田舎町の人々の、なんとものどかで平和な日々。読んでるこちらまでのほほんとしてくる。それでいて、人生や人の心の真実はきっちり捉えてるんだよねえ。平伏。2015/11/29

madofrapunzel

3
★★★★☆ 最近読んだヘルタ・ミュラーの「澱み」に近いものを感じました(舞台設定が農村である点)。 最初らへんの、少女があっという間に死ぬ話が1番印象的でした。解説で語られる通り、ストーリーは悲しいテーマなのにどこかそれを軽快に描く、筆者独特の才能を感じましたo(^-^)o 面白かったです。2011/03/13

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