内容説明
家族を捨てた生母・美雪が運営する不幸な少年少女のための施設「森末村」とは? 東京に密かに借りたアパートで順哉があやしく交わる「内なる女」とは? 東京、大阪、伊豆、北陸、九州、北海道を舞台に、人間が自らの「宿命」を見据えつつ、なお幸せに生きようとするとはどういうことかを問う純文学巨篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
となりのトウシロウ
57
なかなかスッキリしない読後感です。下巻は息子と生母の再会がメイン。なぜ美雪は幼い順哉を捨てて家を出なくてはいけなかったのかが明らかになります。しかし、これがもう一つ合点がいかない。状況は理解するのですが他に方法はなかったのか?と思ってしまいます。また、美雪の述懐の通りだとすると、父はなぜ美雪との約束を果たさなかったのか?さらに、順哉の内なる女性の描写は必要だったのか?仮に必要だとしても扱いが大き過ぎないか?宿命に抗して力強く生きる姿が活きるお話になってないのが残念です。2024/03/23
巨峰
41
生き別れた子と母の話でこのページを持たせた力量は認めるのだが、この小説はとても気持ち悪いところいくつかある。どうして、主人公は目の前で自殺した少女をネタにして自らパンツをおろして性器を握ってオナニーするんだろう。さっぱりわからない。メタファっていうものかもしれないけど、きもいとしか言いようがない2015/09/11
エドワード
22
睡蓮と蓮は、ともに水面に咲く花だが、蓮が泥の中に広く根を張るのに対し、睡蓮は鉢でも育てることが出来る。「蓮の花は因果倶時の譬喩ですのよ」という美雪のセリフが出てくる。花の内に実が成る-原因に結果が伴っている。順哉の祖父の死と美雪の離婚、飛び降りた少女の手紙の真相が次々と明かされる。人と人が出会い、愛して別れて、次の世代へと続く。人の明日はわからない。だが何時の日も人は一生懸命生きているのだ。二万年前の実から花を咲かす蓮のように、自分がいなくなった後に結果が現れることもある。宿命の不思議を感じる物語だった。2019/06/20
くろすけ
21
友人が精魂込めた工芸品を自慰に使うとか、妄想に浸るためにわざわざ亡くなった老婆の家に忍び込むとか、生き別れた子に陰湿な匿名手紙を出すとか、どうにも違和感が強くて入り込めなかった。そうせずにいられない心の動きが読み取れないので、意味のない唐突な奇行にしか感じられなくて。その違和感がこの作品を味わう上で重要な要素なのかもしれないけど… 消化しきれなかったのは私の力不足でしょう。 2014/09/03
ひよピパパ
16
上巻で残されてきた謎の一つ一つが解明されていく。母子の別離の背景には母を取り巻く悲しい物語があったのだった。睡蓮にまつわる仏教思想「因果倶時」も絡みながら物語が展開され、ストーリーに深みがあった。2020/06/25