内容説明
フランス革命の激動のなか、貴族社会で昼夜くりひろげられる性の宴。夫がいながら生娘のままでいる純真な令夫人ジュリエットは、その格好の生贄。策略家の侯爵夫人のシナリオ通り、悲劇と喜劇を味わうはめに──(表題作)。性愛遊戯に身をやつす淫蕩な14歳の未亡人と、その伯母で、老いてから性の悦楽を知った修道女。対照的な二人の運命は、冷酷な美男司祭リュシアンによる、エロティックな受難の儀式によって導かれる──(「夜食(スペ)」)。血の香り漂う官能二篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
23
表題作は当時のフランス貴族の腐臭を感じながら読み進みましたが、最後はスッキリしたと思うと革命側の行為でまた暗澹とした気持ちになりました。家を重視した武家と異なり、西洋は血統を重視すると感じていましたが、違う意味で認識を誤っていたことがわかり、平安朝みたいだなあと思いました。大陸なので血の純粋性を保持するという感覚になりにくいのかなあとも思いました。 2023/10/05
a43
14
憎まれっ子世にはばかった話と、革命のために、かわいそうなことになる老女の2編。官能小説か!と思わせるくらいアレだが。フランスの革命当時の貴族の様子なんかがとても調べこまれていて、風俗史なのかと思うほど。さすが作者さま、フランス政府観光局名誉委員(なんだそれ凄そう←)2016/08/16
ぶっくlover
6
爛れている。 ブルボン王朝の頃の貴族の実態って、こんなものだったのかー2019/06/21
めめめ
4
フランス革命時代を舞台にした中編「貴腐」「夜食(スペ)」2本収録。さすがフランス貴族というか、タイトルどおりの「高貴なる腐敗」の描写に圧倒させられる。「夜食」の主人公である老女も印象深いが、もう一人の語り手が「あの人」なのも面白い。2016/11/16
あ げ こ
3
表題作は兎も角、同時収録「夜食」の仕業で恐ろしく邪悪な一冊と化している。官能への果てしない傾倒。快楽を貪り、腐敗し尽くした貴族社会。表題作で描かれるのは自らの官能が導く恋にのみ価値を見出す貴婦人たち。悪趣味な遊びやたくらみ。胸の空虚を埋めるために快楽を貪り、気の向くまま何人もの相手と関係を結ぶ。その様は愚かであり、滑稽でもあり、悲しくもある。敗北を機に新たな世界を望む主人公の心理は極めて素朴なもの。最後の皮肉も効いている。社会の堕落した性と官能…藤本ひとみらしさ爆発の作品。感情の機微を丁寧に、多くの言葉を2013/03/14




