出版社内容情報
――シャールがその天才に出会ったのは、あの奇病が国に広がる、2年前のことだった。
13歳のシャールは、国いちばんの料理人である父のあとを継ぐために修行をつづけている。あるとき、慈善団体の活動に参加したシャールは、貧民街で暮らす少年・アズレと出会う。アズレのもつ天才的な料理の才能に気づいたシャールは、彼に料理を教えることにするが、ふたりの関係はある日、とうとつに終わってしまう。そして2年後……。
【目次】
内容説明
野間児童文芸賞受賞作『杉森くんを殺すには』の作者がおくる料理と命の物語。作ろう!ふたりで本当においしい料理を。登場する料理のレシピつき。物語に登場する6つの料理が作れる!
著者等紹介
長谷川まりる[ハセガワマリル]
長野県生まれ。東京育ち。『お絵かき禁止の国』で第59回講談社児童文学新人賞佳作を受賞、同作で講談社よりデビュー。『かすみ川の人魚』(講談社)で第55回日本児童文学者協会新人賞、『杉森くんを殺すには』(くもん出版)で第62回野間児童文芸賞を受賞
西村ツチカ[ニシムラツチカ]
兵庫県出身。漫画家・イラストレーター。2010年、短編集『なかよし団の冒険』(徳間書店)でデビュー。同作で第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
トロピカ
10
図書館の新刊置場から借りた本。児童書とはいえ大人でも十分読み応えがありしかも面白い。文体も読みやすく何よりストーリーにも惹き込まれ繰り返しになるけど面白い。この作家に出会えて良かったと久々に感じた読書だった。いやはや面白かった(しつこい)。巻末に作中で出てきたレシピ本が掲載されていて驚いた。ホントに作れるんだ… メープルシロップが活躍する場面も多かったしと読後に調べてみたらやはり舞台はカナダがイメージされているっぽい。ピースープあたりなら材料的にも作りやすいかな?天才アズレの味には遠く及ばないとしても😊2025/09/15
たかぴ
6
児童文学だから出版後の反応が薄いのか?食べる事、生きる事への切実な緊張感が始めからあるのに読者に気付かせない筆力、著者さんがアズレにも見えてくる。そして、この著者の作品は死の気配が薄く漂ってる。しかし其れは諦観と静かな眠りの前にも似ていて。2025/08/14
鳩羽
5
レストランのシェフの息子シャールは、子供の頃から料理の道を極めんと努力していた。あるとき慈善活動で貧民街で料理を作ったとき、スープに手を加えて劇的に美味しくした少年アズレと出会う。シャールはアズレに文字や料理を教え始めるが…。食死病という奇病によって、食べられなくなり死ぬことがある世界を土台に、美味しく加工すること、生きるために食べることの、贅沢さと切実さが静かに提示される。危機的な状況にあるとき、子供だからと言う甘えが通用しない厳しさ、これは平等ではないのだからどちらかというとシャールに同情してしまう。2025/09/14
いなこ
4
国一番の料理人でレストランのオーナーシェフの父を持ち、小さい頃から料理の特訓をしてきたシャールは貧民街で暮らすアズレと出会う。2年後奇病で亡くなった父に代わりレストランのシェフとなったシャールは天才とおぼしきアズレを連れてきて…。育ちの違う少年2人が料理で関わり合う過程やレストランの仲間のやり取りが興味深い。設定がどこかの国か巻末のレシピに知らない材料もあったり、奇病などファンタジー要素も感じられた。結末まで2人の成り行きが気になりサクサク読めた。2025/08/31
ebi_m
1
日本ではない架空の国のシェフの少年の話。寓話のようでいてリアリティもあり、不思議。かつて読まれてきた翻訳児童文学に比べると描写が省かれ会話と行動ベースで話が進んでいくので格段に読みやすく、そして私には素養がなく具体的な国がイメージできなかったため、なんか昔の花ゆめ系の作品とかの雰囲気…と思いながら読んだ。ツチカさんの挿絵もそういう意味でバランスが良い。奈倉有里氏の読売書評見ると、わかる人が見ればもっとわかるのね。/メープルシロップを雪に流すやつは、ワイルダーの作品に出てきたなあと思う(大きな家だっけ)2025/09/14