内容説明
阪神特殊鋼の専務万俵鉄平は、米国企業からの増注契約をキャンセルされて危機に陥る。旧友である大同銀行の三雲頭取が多額の融資を了承してくれるが、その矢先、熱風炉が爆発するという事故が出来──。一方、万俵家の次女二子は、総理の縁戚と見合いをしながらも、鉄平の部下である一之瀬に惹かれていく。万俵家に同居する大介の愛人・高須相子が企む華麗な閨閥づくりの行方は……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
188
主人公の万俵鉄平が専務をする『阪神特殊鋼』のモデルは、上巻のレビューにも書いたように『山陽特殊製鋼株式会社』である。1965年3月6日に負債額約500億円(当時として最悪の負債額)を抱え、会社更生法の適用を申請し事実上倒産した。倒産をきっかけに経営陣が約70億円の粉飾決算を行っていたことが発覚し、政治問題になり国会でも取り上げられる。この事件は、作家・清水一行の小説『殺人念書』に詳しく描かれていて、小説では南海特殊鋼と帝国製鉄という名称になっている。当時は『戦後最大の倒産』として産業界を揺るがした事件だ。2016/04/22
mitei
72
大介が異常な精神を持っているように感じられた。そしてトップがそんな小心者に動かされている会社は不幸だと思った。2010/08/03
reo
59
山崎センセ、鉄平坊ちゃまには試練を与えまんな。アメリカンベアリング社が投資ファンドに買収され、ベアリング素材契約のキャンセル事件。高炉建設の後ろ盾大川一郎の急逝。新年の伊勢志摩の初猟で雉と間違え、頭取のハンチングを打ち抜いてしまう。同じトリでもえらい違いや。鉄平「お父さん、どうしたのです、しっかりしてください」大介「お、お前は…私を…」いっそコメカミを打ち抜いていた方が良かったかも。仕上げは熱風炉のガス爆発。これだけ試練が重なると世の中に神も仏もあるものかと思わざるをえなくなる。悪が蔓延る予感で、下巻へ。2017/04/19
優希
53
捨てる紙あれば拾う紙ありとも言うように、企業から増注契約をキャンセルされたと思えば、三雲頭取が融資を了承。しかし、熱風炉爆発という危機に遭う鉄平は悪運が強いようです。二子は一ノ瀬に惹かれ、相子は何か企みが。それぞれの行方は次巻で明らかになるのでしょうか。2022/06/15
ジェンダー
50
阪神銀行が金融再編の中で小が大をくう合併を鮮明にする。そして阪神特殊鋼も資金繰りに苦しむ2013/02/24