内容説明
男がテストプレイを頼まれたゲーム。それは、とてつもなく生々しくリアルなものだった。ゲーム世界に、のめり込んでいくに従い、現実との境目がどんどん曖昧になっていく男。彼の中で、何かが徐々に狂い始めていた。時を同じくして、男の妻が怪しげな会合に参加するようになる。ゲーム、謎の団体……全てに関わる『ハグルマ』とは!?『ドグラ・マグラ』的狂気の宴がここに!!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
58
転落死した同僚の開発していたゲームを引き継いだ主人公、ただゲームをプレイしているうちに。といういわば現実と幻想をまたぐ物語であるが、こういった作品は結構幻想内部と現実が分けられているのが多い印象。ただこの作品はどこがゲームでどこが現実か、その境界があいまいになってきて、仕舞には実際起っているのか主人公の狂気かも曖昧になる。こういう虚実が曖昧になる作品好きだし、それが著者独特の文体で紡がれるとさらに曖昧さが増すような気もする。よってストーリーを追うのは難しく、人の脳内を覗き込んだような嫌な感じを受けました。2020/09/18
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26
あらすじと共に書かれていた「ドグラマグラ的狂気の宴がここに!」というフレーズにつられて手にとったのですが、読んで納得、この本は狂気に溢れています。夜中に読んでいたのですがひたすらに不気味で言葉にできないような心地悪さを感じました。どこからが現実で、どこからがゲームの世界なのか境目がまったくわからず、むしろゲームの世界すらあったのか怪しく感じるほどでした。ただこの気持ち悪さがずっと続き、あまりストーリー的に変化もなかったので最後の方は惰性で読み続けてしまいました。グロい描写なんかは結構好みだったのですが…2013/05/09
aquamarine
19
北野さんの作品は「きつねのつき」しか読んだことがなかったのでまず表紙に驚き、さらに裏表紙にあった「ドグラ・マグラ的狂気の宴」という謳い文句に惹かれ、図書館からお借りしてきました。生理的気持ち悪さは多少ありますが、わけのわからないもの、という感じで怖さはあまり感じることはなく、文字数などの言葉遊びはありますが、するすると平坦な感じでラストまで読んでしまいました。ドグラマグラはちょっと言い過ぎのような…。怖さより得体のしれない気持ち悪さを楽しめる方にはよさそうです。2013/08/02
猫丸
15
読友さん推薦の虚実越境本。著者と共通の読書体験が感じられるのが楽しい。全体としては芥川「歯車」がベースになっていて、語りは筒井節。とくに雰囲気としては「虚人たち」を狙っているはず。「ドグラ・マグラ」も意識しているだろう。最後には古代生物が集合無意識に作用するSF風味なども盛り込んだ欲張りな作品だ。ゲームが日常に侵入するパターンにホラーとくれば、いとうせいこうの「ノーライフキング」。同世代かなと思ったが、北野氏が7つほど年上のaround還暦の人である。やや意外。言葉遣いが若い印象を受けたんだけどなあ。 2019/09/25
みんち
11
雪が降って活動範囲が狭まる前にと、車で遠出しがてらに大規模書店巡り。その際にようやく北野勇作氏の本を一冊発見。まさかの角川ホラー文庫から「ハグルマ」を読了。カバー怖ぇ(笑) 物語は、ゲーム会社に勤める主人公が、制作半ばで自殺した後輩の手掛けていたタイトルを引き継ぐところから始まる。そのゲームは後輩が仕事の合間に半ば趣味で作り上げていたもので、販売不振で埃を被っていたバーチャル体験型ゲーム機でプレイするもの。データディスクからプログラムを解析できなかった主人公は、とりあえずテストプレイをしてみて2016/11/25