内容説明
小雨が靄のようにけぶる夕方、両国橋をさぶが泣きながら渡っていた。その後を追い、いたわり慰める栄二。江戸下町の経師屋、芳古堂に住みこむ同い年の職人、男前で器用な栄二と愚鈍だが誠実なさぶの、辛さを噛みしめ、心を分ちあって生きる、純粋でひたむきな愛と行動。やがておとずれる無実の罪という試練に立ち向う中で生れた、ひと筋の真実と友情を通じて、青年の精神史を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
616
タイトルこそ『さぶ』だが、出番は栄二の方がずっと多い上に、プロットを背負うのも、物語の中で視点人物の役割を果たすのも共に栄二である。したがって、読者もまた栄二に従って物語の進行を追うことになる。だが、最後の一文に辿り着いた時、私たちはやはり主人公はさぶだったのだと思いいたる。さぶを一言で表現するなら「愚直」ということになるだろうか。そして、その愚直が持つほんとうの価値を知っていたのは栄二である。しかも、その栄二においてさえ、物語の最後の最後でさぶの価値を知るのであり、況や私たち読者においてはなおさら。2021/10/09
ehirano1
278
感動の名作で本気で泣ける。もはやどんな言葉もそこには不要。本書に出会えたことを幸せにさえ思えます。2024/10/27
みも
256
不朽の名作。才気煥発だが直情的な栄二を通し、さぶの純朴さや表裏のない実直さを際立たせる。友情の物語であると同時に、人と人との絆が心の深奥に沁みる。女一人で「生き馬の眼を抜くような、世知辛い世間」で生き抜くおのぶが栄二に喝を入れる「人間が人間を養うなんて、とんでもない思いあがりだわ」峻烈な怨恨に悶える栄二は、やがて人々の無償の心遣いに触れ、人は寄り添い恩義を重ねて生きるという人生訓を学んでゆく。登場人物全ての生き生きとした個性創出と、お仕着せのない金言の数々。「おら、思うんだが、みんなに読んでもらいてぇな」2021/03/05
zero1
256
時代小説を苦手とする人に、ぜひ読んでほしい一冊。山本の代表作と言っていい人情話。栄二は盗みの疑いをかけられ自暴自棄になる。さぶと人足寄場に。人はどこまで信じられるのか?栄二の話が主なのに何故、この題名かは読めば分かる。結末に驚かされた読者は多いはず。「深夜特急」(沢木耕太郎)でも紹介されたが、冒頭の部分は鮮やか。山本は読者からの励ましを最も大切にしていたことから直木賞すら辞退した。この作品を宮部みゆきや高田郁は読んでいて、彼の想いは後の作家たちに受け継がれている。時代小説の金字塔とは言い過ぎではない。2018/11/02
そる
212
30年以上前に読んで今回再読。全く忘れてました。総じていい話だが最初に起こる事件が酷くて英二が誰も信用できない、世間を恨む思考になっても仕方ないと思う。親友も好きな人すらも受け付けない。でも人足寄場の人達の人情に触れて変わっていく英二と、ずっと変わらずに英二を慕い続けるさぶがほんとにいい関係で良かった。さぶは自分はだめだと悩むけどこの真っ直ぐな信頼は強みだ。「「人間の気持なんてものはいつも同じじゃねえ、殴られても笑っていられるときがあるし、ちょっとからかわれただけで相手を殺したくなるようなこともある」」2025/01/26
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