内容説明
明治時代の終わり頃の物語――。ひなびた南の島で生まれ育った小鳥遊夏海(たかなしなつみ)は、岬の老樹の根元で絵を描き始め、腕は上達するが、初めて東京の展覧会に出品した自信作は落選。だが、その絵を見たらしい東京の資産家・海棠糺(かいどうただす)が来島し「書生(しょせい)として預かり、本格的に絵を学ばせたい」と申し出る。 単身上京した夏海は、海棠家出入りの骨董(こっとう)商の息子・日景兵部(ひかげひょうぶ)と知り合う。発明や悪戯(いたずら)が大好きで、男にしか興味のない兵部は夏海に惹(ひ)かれ、恋路の右も左もわからぬ夏海も、兵部をモデルにして初めて人物画を描きたいと思う。 だが二人の周囲で二つの悲恋が……そして事件は起こった!!