内容説明
400年の歴史を持つ浄土真宗妙見派の京都・龍遠寺。天空の星を写しとるとされるその庭園で、庭師の親子が殺される事件が起こった。父・泉繁竹は首にノギスを刺されて、息子・真太郎は溺死させられた。繁竹を看取った蔭山は、「この子を、頼む……」という最期の言葉に違和感を抱きながら、2人の死の謎を追いかける。その先に待っていたのは、庭園の400年の歴史に隠された驚愕の事実だった……。絢爛豪華な本格長編ミステリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
36
京都の古寺を舞台に、殺人事件の動機となった四百年にわたる秘密とは何か。壮大なテーマを綿密な計算のもと、作者独特の美しい表現で書き上げた作品です。ラストの被害者の思いが明かされる下りは、胸がつまり感情の高まる文学的シーンとなっています。しかし、主人公の設定を此でもかと説明していますが、結局ストーカーにしか思えず感情移入ができません。更に前半の絡みが後半には全く触れられない矛盾もあります。作り込まれいるのは解りますが、軸となる話は三つ在りその説明が詳し過ぎて、分けても充分な話になったのではないかと思えます。2014/07/12
つたもみじ
24
京都で400年の歴史を持つ龍遠寺。開祖が切腹死を遂げ、天空の星を写し取っているとも言われる庭園で、庭師の親子が殺される。父・泉繁竹の最後に立ち会った蔭山は、繁竹の「この子を、頼む…」という言葉に込められた想いの強さに違和感を感じつつ、二人の死の真相を追い始める。時を同じくして起きた歴史事物保全財団での盗難&殺人事件と共に事件の真相に近づくにつれ、秘匿とされていた龍遠寺の庭園の謎をも解き明かされていく。途中で薄らと予感していたラストの展開、繁竹の最後の言葉に秘められた真実。胸を打たれた。2015/01/15
造理
7
★★★☆☆ 宗教の蘊蓄に溢れ、やや小難しい話が中盤まで続きますが、後半の龍遠寺の謎や、事件が解決していく怒涛の展開は圧巻。また普段はミステリに物語性は求めないドライな私でも結末にはグッときました。じっくり読みたい傑作です。2017/03/31
小物M2
2
歴史的な謎と現代の事件が巧く組み合わさった傑作。正直中盤辺りまでは、盛り上がりもなく淡々と進みますが、終盤の怒涛の解決には目が離せません。盗聴器を手がかりに使ったユニークな解決は面白いですし、龍遠寺の秘密には驚き。そして、終わりに明かされる泉繁竹が最後に残した言葉の意味に感動しました。2012/02/29
きりと
1
最後の一言に感動間違いなし。庭園の謎は難しい部分があるので頭がさえている時に読むべし。しかしその、こ難しい話が全て・・・だったとは・・・2010/04/09