内容説明
これはただ、一人の男が見上げた、小さな青空の物語だ。――純粋であるがゆえに、不器用な生き方しかできない男たち。彼らの思いがけない言葉と行動によって、人びとは人生の真実を知ることができる。太宰治賞作家による、奇跡と感動の物語二篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紫 綺
107
この地上で、その生きにくさゆえに喘ぎつづけている、一体の生き物「陸の魚」。その生き方は想像もつかない。ましてや、私は誰かのカミサマにはなれない。でも誰かのヒトで、居つづけようと思う。2014/03/07
人間万事塞翁が馬ZAWAZAWA
45
「孤独」「やるせなさ」「さみしさ」が見事に書かれていた。よい作家に出会った。2013/06/22
*maru*
32
著者初読み。ここに2人の男がいる。山間の小さな町の道路沿いに建つ一軒のドライブイン「HOUSE 475」に佇む男。東京の高架下でギター片手に佇む男。思い出とは愛しいもの。不器用とは儚いもの。生きるとは孤独なこと。個性とは頼りなく厄介なもので、人と同じだと息苦しいくせに、人と違えばそれはそれで心細い。孤独で不器用なセイジと竜二は誰よりも人間らしく、純粋だ。なんだろう。自分の思い出をくすぐられたり弄られてるみたいに、居心地が悪いような、でも楽しいような不思議な読み心地。不思議で至福の読書タイムでした。2017/12/28
Chibi
28
心が震えた。素晴らしい作品に出合った。自分と違いすぎる人間を、人は、変わり者ということがある。そんな一言で片付けられる人間は、誰一人としていないのに。他の人とは違う場所から物事を見、感じている…感じすぎる人、セイジ。この世界で生きていくのが困難な陸の魚。ある残虐な事件によって、心を閉ざしてしまった少女。その少女の心を外の世界に連れ出したセイジの行動は、周りから理解し難いものだった。彼はきっと、それ程までに少女の傷みを感じていたのだろう。その傷みに寄り添う術は、彼にとって、その行動だったのだろう。2014/08/19
花花
24
映画を観て、登場人物達の背景や心情を細かく知りたくて原作を読みました。多少違いはあるものの、原作でも過去のことなどにはあまり触れておらず、サラリと描かれている印象でした。セイジのとった行動はあまりにも衝撃的で理解は出来ないけれど、ひとりの人間を救ったのは確か。こうやってしか生きていけないセイジの背負っているものの重苦しさが切なすぎる作品でした。2012/08/24