内容説明
「おそらく城とは、何よりもまず、専制君主の夢想のための場所なのだ」―自らカステロフィリア(城砦愛好)を認ずる澁澤龍彦の珠玉のエッセイ集。そこでは、ばさら的創造力で安土城を築き上げた織田信長が“戴冠せるアナーキスト”ヘリオガバルスに重ね合され、サド侯爵の秘められた“サディズムの実験室”がラコストにひろがる廃墟のなかに幻視される。
目次
会津城
千代田城
多宝塔
ストゥーパ
ラマ塔
天壇の祈年殿
サン・タンジェロ城
隅櫓
望楼
女牆〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
48
夢の回廊のようにくねくね続くこの書物には、独特の硬さがある。例えば安土城の消えた天守への石段を一歩一歩登っていく所など、まるで夢界を歩くように思わせて、最後まで物質感を喪わない。信長の精神とダンディズムについて、珍しい昆虫を観察する少年のように楽しげに語る著者は、まぎれもなく信長と同質の精神の持ち主だろう。サド侯爵の城は廃墟であるが故に空想をかき立てるが、それは怪奇性よりも途方もない人間の意志へとつながる。『悪徳の栄え』に提示された、快楽の坩堝としての城は、まるで安土城の石段のように硬く心を沸き立たせる。2013/05/20
マッキー
12
知のブラックホールに閉じ込められたような感覚に陥る2016/05/20
misui
11
カステロフィリア(城砦愛好)を自認する氏による紀行エッセイ。信長の安土城に始まり、サド侯爵、鏡花『天守物語』、ヴェルヌ『カルパチアの城』などを、時に現地に足を運びながら闊達に語る。城とは専制君主の夢想のための場所、「閉じこもることによって力を凝集する」場所であり、あるいは牢獄や墓のイメージを秘めつつ、凝集された力は夢や死の世界にまで及ぶ。思えば澁澤龍彦自身もそのように内に夢想を育んだ人であった。2013/04/10
redbaron
10
城というと、あたしは海外のお城を思い浮かべてしまう非国民ですw そんなお城を見る(というより、思う)と、どうしても「エッチ」なことが頭に浮かんでしまい…純粋に建築の美より、この中で「ナニ」が行われていたのかと、ゲスな想いに駆られてしまうのは、城内は治外法権だったのかなという単純にしておバカな頭のせいですかね。閉ざされた中では、人は精神を病みそうだし。でね、「花を摘む著者がかわいい」←これが最大のあたしの収穫w 本の感想ではないですね。2016/04/22
りょう@りんご売り
5
天文二十二年に遠近法を用いた建物が日本の神社で建てられていたという話があったが、天文二十二年というのは調べてみたら西暦で言うと1554年らしく、西洋の世界と日本が交流を持ち始めてまだまもない頃のはずだ。ね、遠近法とかもう伝わってたのかな?すごいよね。2018/04/26
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