内容説明
1972年「赤旗」平壌特派員となった私は、大阪の定時制高校で席を並べた親友の尹元一(ユンウォニル)を訪ねた。友は「地上の楽園」で幸せに暮らしているはずだった──なぜ金日成は帰国運動を必要としたのか。書かれざる日本共産党と在日朝鮮人運動の関係とは。「突出する力作」(深田祐介氏)、「人を動かす力をそなえた作品」(立花隆氏)。明らかにされる重大事実とともに理想を信じて北へ帰った人々の悲劇を描き、満票で第30回大宅壮一ノンフィクション賞に輝いた記念碑的名作。
目次
第1部 大阪篇(密航少年との出会い;おまえはなんで大阪にきたんや? ほか)
第2部 済州島篇(緑の島;洞窟の死闘 ほか)
第3部 ピョンヤン篇(あこがれのピョンヤン;最初のショック ほか)
第4部 ワシントン・東京篇(「赤旗」退職;ソ連に占領された北朝鮮 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
64
迫真のノンフィクションである。著者の体験に基づく朝鮮と日本人の関係は 非常に重い。戦後隣の国で、何があったのか、そして私たちはいかに何も知らなかったのか.日本の国内で、朝鮮の人たちとどう接していきたのか確かにそんな時代があった、という感慨を呼び起こさせる良書である。2010/04/25
makimakimasa
11
著者の体験に基づく大阪扁(少年時代の在日との関わり)と平壌扁(赤旗特派員として強制退去)は真に迫って読み易かったが、済州島での武装衝突の詳細や、韓徳銖なる人物を巡る経緯や主張の分析は、やや退屈だった。ただ朝鮮戦争の実際や、日本共産党&朝鮮総連の関係史は重要。日本人妻里帰りによる一時帰国で40年振りに再会した高校後輩が、幹部の貫禄で振舞っていたのに一番ぞっとした。消えた友人の運命との対比、著者も消されていた可能性、本書刊行約20年でも消えないこの国に底深い恐怖を感じる。正に帰国事業もある意味拉致だった。2020/10/04
ふじこ
10
共産党が大嫌いなので元赤旗新聞記者である著者の作品を読むべきか迷ったが、平壌駐在員であり北朝鮮追放の過去のある人物はなかなか稀有な存在であることから読み始めた。 様々な活動により北の攻撃対象となる著者。国際問題を避ける為日本人の手で著者を殺せ、と主体思想研究会を抜けた青年に告白されたとある。著者の死因の心不全が北朝鮮のスパイによるものでない事を祈りたい。 北の制裁が続く昨今、日本がすべきことは朝鮮総連の解体ではないか。朝鮮学校の無償化やらヘイトを訴える前に自国の人権侵害ついて事を正してから主張しろ。 2019/07/26
ナツメッグ☆
7
昨日から一気に、電子書籍にて読了。著者は、名前こそ知っていましたが著作に触れるのははじめて、題材がかれ自身の生い立ちにも関わることもあって熱い思いが伝わってきた。筆力のある方だと思います。しかし北朝鮮の歴史と現状、先の「北朝鮮」続きで暗澹とされる。金日成、金正日、金正恩と続く軍を先頭にする独裁国家、なんとかしなくてはとつくづく思う。拉致問題として絡めて言えば、「帰国者問題」もある意味拉致という指摘、正しいと思う。2013/09/23
カニック
5
地上の楽園を信じて帰った人たちのことを思うと胸が痛い。2019/05/11