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内容説明
オペラ――この総合芸術は特定の時代、地域、社会階層、そしてそれらが醸し出す特有の雰囲気ときわめて密接に結びついている。オペラはどのように勃興し、隆盛をきわめ、そして衰退したのか。それを解く鍵は、貴族社会の残照と市民社会の熱気とが奇跡的に融合していた十九世紀の劇場という「場」にある。本書は、あまたの作品と、その上演・受容形態をとりあげながら「オペラ的な場」の興亡をたどる野心的な試みである。
目次
第1章 バロック・オペラへの一瞥、または、オペラを見る前に
第2章 モーツァルトと音楽喜劇、または、オペラの近代ここに始まる
第3章 グランド・オペラ、または、ブルジョアたちのヴェルサイユ
第4章 「国民オペラ」という神話
第5章 あらゆる価値の反転、または、ワーグナー以降
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨峰
16
オペラの歴史がざっくりわかって面白かった。でも、おいらはオペラをみたことがないのです。う~ん、この先見るかどうか考えてしまうなあ。オペラが絶対君主制の元で生まれ、19世紀の市民主導の社会の元で花開いた西洋ブルジョア社会の産物で、20世紀第一次世界大戦のあと歴史的使命を終えたと理解してしまったら、現代に生きる日本人がオペラを見る必然性も必要性も無いといわざるをえない。では、過去の西洋の歴史的産物を見るためだけにオペラを見るとするならば、その入場料もけして安くないし、さらに時間的な負担もと思うと、、、、、、、2010/08/01
ochatomo
8
サントリー学芸賞受賞作 バロックオペラについて知りたくて手に取った オペラは1600年頃イタリアで宮廷娯楽として生まれた 喜劇の中に悲劇を見ようとするモーツァルトの真骨頂 フランス革命・共和制・帝政・復古王政を経た七月王政時代(1830~1848)の歴史メロドラマがグランドオペラ、民族主義から生まれた国民オペラ、そしてその2つを結びつけたワーグナーやハリウッド映画と流れがわかってよかった 2001刊2025/02/23
いりあ
7
音楽学者の岡田暁生氏が17世紀から19世紀にかけてのオペラの歴史をまとめたもの。いわゆる有名作品の見どころや内容解説、有名な作曲家紹介ありきのオペラ史ではなく、オペラ劇場という「場」の歴史を辿ることに主眼が置かれており、当時の社会情勢や風俗などを絡めてオペラ史やオペラ作品の成り立ちが解説がされており、とても面白く読めました。モーツァルトの先見性と良くも悪くもワーグナーの影響力の大きさを再確認しました。音楽史の本ですが、広くヨーロッパ史などに興味がある人にもおすすめ出来ます。2010/08/18
bibliophage
4
17世紀から20世紀までのオペラの「場」の変化を書いている。バロック時代の王族の浪費性、そして、モーツァルトの登場(ラクロが出てきてなるほど!という感じだった)、その後のフランス革命とプルジョアの登場、また、国民オペラの誕生、そしてワーグナー〜といった感じで変遷をたどっていた。オペラを浪費芸術と言ってたのが忘れられない。どの章も納得させられた。社交の場やステータスとしてのオペラ座というあり方から鑑賞の場として変化していったのは面白いなと思った。ただ、現在のオペラの場についてももう少し記述して欲しかった。2015/12/19
kumoi
3
オペラとは奢侈であり散財である。圧倒的な財力を持って、王が自らを賛美することが、バロック時代のオペラの特徴である。18世紀になると、ロココ趣味が流行し、モーツァルトの「フィガロの結婚」のような人間愛に根ざした喜劇が登場する。フランス革命後、オペラは上流ブルジョワジーにとってのステータスとなる。革命によって貴族は追放されたが、貴族文化はこの新たな聴衆によって継承されたのだ。圧倒的なスペクタクルを本質とするオペラは、もはや時代遅れの古典芸能に過ぎないのだろうか、それとも現代に訴えかける何かを持つのだろうか。2022/02/15