内容説明
にんじんが嫌いな父とその娘、サラリーマンだったころを思い出す老人、自分に物語が足りないことに気づいたOL、入社3年、肥満を気にし始める青年…。なんでもない「ふつう」の人々が生きる、ごく「ふつう」の人生。そのささやかな歓びと淡い哀しみを切々と描く短編集。名手・橋本治が紡ぎ出す、九つのほのかな感動。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のんのん
45
何の変哲もない日常の中にあるものこそが「物語」なんだと語る橋本氏の九篇の短編集。ドラマチックな事件も何も起きない中で あきらめの美しさ、あきらめの静けさを表したとのこと。表現のしかたが独特で 少し面倒臭い言い回しにあまり楽しめなかったかな。2014/05/12
ゆめ
18
★★9編の短編集。ごく普通の日常にスポットを当て心の動きを描き出しているところはさすがです。2015/09/09
だてこ
12
人からおすすめされて。びっくりするくらい何も起こらない日常を描いた短編集。私は無意識に、物語はなにか事件が起きたりするものだという先入観を持っていたなと思った。事件も起きないし、登場人物達が現状をつまらなく思っていてもなにも変わらず日常は続いていく。心理表現が見事なので、感情移入はできるのだけれど、だからこそ打破できない現状にちょっとモヤモヤしてしまった。これは読み手によって受け取りかたが大きく変わりそう。私は、皆もう少し行動を起こそうよ!!と思ってしまった(笑)2021/02/14
nukowan
6
「にしん/みかん/あんぱん/いんかん/どかん/にんじん/きりん/みしん/ひまん」九つの短編が集まっている。なんにもない自分、そんな自分を持て余しているような、向き合っているような、切なくもしみじみと、切実でもあるようで、なにも考えていない風でもある。橋本治が詰まった一冊。読む人によっては退屈な作品なのかも?/亡くなってもう四年も経つのか。2023/06/07
Aki
6
論理的で感情が抑制された橋本さんらしい文章です。生きる「歓び」は、自己肯定からしか生まれないのでしょう。2015/03/07