内容説明
パリで拉致された恋人のファティを追って、有曾奈春樹は彼女の故郷アルジェリアへ向かった。サハラ北端の街ガルダイヤにたどり着いた有曾奈は、日本企業のプラント現場で通訳として働きながらファティを捜す。日本人作業員と現地人との確執、荒涼たる砂漠に根付く宗教の束縛…さまざまな試練の中、ついにファティを奪い返した有曾奈。だが彼を迎えたのはファティの意外な告白だった…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
練りようかん
12
パリで恋人を誘拐された主人公が彼女の故郷アルジェリアで奪還に挑む。まず主人公の苗字が珍しいなと思ったが、登場人物が反応するのは下の名前の方でハルキは裏切り者の意味らしい。イスラム教徒でない男と付き合う彼女がそうなのか、亡き父は悪党に味方して殺されたと言われていて、主人公にもいろんな形でふりかかる切っても切れないテーマでこの名前にした意味が深い。父の死の真相と彼女が特別隔離される理由のダブルの謎を追いかけながら、冒険小説とナショナル・アイデンティティの断面に繊細と肉薄の両方を感じ、著者の美点を再認識した。2024/07/12
はまちゃん
7
誘拐されたアルジェリア人の彼女を取り戻すために、アルジェリアの砂漠にある天然ガスのパイプライン建築現場で働くことになった日本人 有曾奈春樹の冒険が描かれている。物語の舞台はほぼアルジェリアであり、熱く過酷な砂漠の乾いた砂の香りを感じながら読んだ。また、この地におけるイスラム教と信者との深いつながりもしっかりと書かれており、興味深い。しかし、アルジェリアでのプラント建設と聞くと、10年ほど前に起き、日揮の社員の方々が犠牲となったテロ事件を思い出す。2022/07/11
owl&shepherd
4
積読状態だったが、『シェルタリング・スカイ』のキットがなんであんなことになるのか気になって。予想外に面白かった。あんたらのヒューマニズムは、緑と水に恵まれた土地の話、とアルジェリア人。おっしゃる通りです。このままの人格でアルジェリアに生まれることはなかった。彼らも日本に生まれることはなかった。それでも、いつの時代にも越境する人間はいるということね。越境してみたかったな。2018/08/01
HoneyBear
1
アルジェリアが舞台。イスラム文化の理解の難しさ。異文化のでの国際プロジェクトで日本人と現地人が働く際に生じる軋轢の深さなどを良く伝える。中盤までは物凄い小説だと思ったのだが、終盤がドタバタしていて読後感が今ひとつ良くない。
おふとんくん
0
アルジェリア、パリ、イスラム。主人公を若い頃の藤岡弘、にして読みました。砂漠に住むってことは、水も緑もある日本人には分からないってことです。オモシロかったです。映画にしてもらいたいです。2016/12/27