内容説明
二万年前に惑星コブナントに移住し、聖ベアトリスを信奉する社会を築いた人類の子孫たち。そこで微小生物の研究を始めた敬虔な信者マーティンが知った真実とは? ヒューゴー賞・ローカス賞を受賞した表題作、バックアップ用の宝石を頭のなかに持った人類の姿を描いた「ぼくになることを」ほか、遙かな未来世界や、仮想現実における人間の意志の可能性を描く作品までをテーマにしたヴァラエティにとむ全十一篇を収録
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
408
ヒューゴー賞・ローカス賞受賞の表題作など11作の短篇を収録。解説の瀬名英明氏の指摘を受けるまでもなく、ここに共通するテーマがアイデンティティにあることは明らか。ただ、ここで問われるアイデンティティは、かつて20世紀文学が繰り返し模索した哲学的、存在論的な意味におけるそれとは違っているだろう。すなわち、前者が個的、あるいは社会的(サルトルのアンガージュマンなど)であったのにたいして、イーガンのそれは人類がここに存在する意味や、そもそも人間とは何かをSFの手法を用いて語るのである。さらに望むらくは、⇒2019/03/13
miri
64
1999年に表題作でヒューゴー賞、ローカス賞受賞。日本独自の11編の短編集。長編が魅力的な作家だと感じているので、短編になかなか馴染めませんでしたが、後半に中編というべきボリュームの「祈りの海」が収められていて、吸い寄せられるように読了。解説の瀬名秀明氏が指摘されているように、科学技術の発展と自己のアイデンティティの問題がテーマ。「祈りの海」では、宗教と科学技術の相克が描かれており、主人公の葛藤と諦念に胸が詰まるものがあった。2019/11/02
催涙雨
64
解説等でも触れられていることだがテーマの一貫性がとても印象に残る形になった。毎日宿主を変えながら生きる「貸金庫」脳内に保存されたバックアップが何者かを考える「ぼくになることを」バーチャルコピーの人格の確からしさを問う「誘拐」などに特筆して表れているのでこのあたりは直感的にもわかりやすい。どれも自分、個人、人間などのアイデンティティについて深く、そして何より面白く語られているもの。後半の収録作品は作中の観念を壊す強烈なカタストロフのなかでアイデンティティを描き出すものが多く、その過程もすこし複雑になる印象。2019/02/03
Akihiko @ VL
48
グレッグ・イーガンさん初読。ヒューゴー賞・ローカス賞を同時受賞した表題作が表す、遥か彼方の超未来だからこその人道的葛藤は見所があり、その他短編も満遍なく素晴らしかった。個人的に、というか男性的に『キューティ』の世界観は大変興味深く読んだ。簡略的に説明すれば『男性でも受胎できる技術が確立され、乳幼児育成体験キットなるものが開発された世界』の話だ。自らが母体となることで文字通り“父母”となった男性の“我が子”への過剰な溺愛っぷりは、技術の発達が人の心をあらぬ方向へ導いてしまう未来を予感させるものだった。2018/03/10
Kajitt22
34
グレッグ・イーガンの初期短編集。幸福とは、祈りとは、充足感、満ち足りた思いとは。惑星コブナントで聖ベアトリスを信奉する少年の成長を通して明らかになる意外な事実。宗教色の濃い短編だが、同時に薬物など化学物質などにも言及。ドーパミンやアドレナリンを思い起こさせる。表題作「祈りの海」のみ再読。2023/09/05
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