内容説明
母も孤児院の仲間も、皆私を置いていった。そして、あなたまで……。■医者の言葉にジェイシーは青ざめ、必死に気を失うまいとした。妊娠……。両親の顔も知らない私が、母親になるなんて……。さらに医者は言った。「あなたの血液型がRhマイナスなので、胎児の父親の血液型やその他の情報を知る必要があるんです」ああ、トムに妊娠したことを話さなければならないなんて。一夜かぎりのできごとだったのだ。新聞記者の私にとって、警部補のトムは情報提供者であると同時に、いい友人だった。だがあの夜、なにかが起こり、二人は愛を交わした。そしてすべてが終わったあと、彼はたった一言、“間違いだったよ”と言い残して去っていった。あれから二カ月、トムは私に会おうともしない。自分が父親になると知ったら、彼はどんな顔をするだろう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
糸車
21
ヒーローにもヒロインにも忘れられない心の傷があって、お互い惹かれあいながら乗り越えるのは難しい距離がある。それでもヒーローには温かい家庭があり、気遣ってくれる家族がいるぶん幸せだと思う。生後二か月で捨てられたヒロインの絶望は深刻で切ない。誰でも最後には去っていくのだと、だから期待しないと怒りや悲しみを押し殺したヒロインの心を開こうとするヒーロー。産みの母や父を探す勇気や、絆を結んだシスターへの愛情に気づかせてくれる。約束が守れなかったり危険な目にあっても警官はヒーローの天職だと言い切れるヒロインもえらい。2015/05/15
キッチンタイマー
5
孤児育ちの新聞記者とステットソン帽をかぶったテキサスの警部補の話。家族にしろ恋人にしろ愛情を持つことを怖がっているヒロイン。あるものを探すというかないものを求めるというか。人はいつか死ぬってことを常に忘れているからいきていられるんだよ。アイツは大丈夫だろうかなどと身辺に思いを馳せたりして。2014/11/02
ぽこ
4
温かい家庭というものを知らないヒロインは、そこに希望を見いだせないのだと思う。だからと言って一人で生きていこうと決心しても、人は一人では生きられないもの。愛は許すことと忍耐なんだなぁとしみじみ思いました。2015/05/24