内容説明
新潟女性監禁事件、腐敗する官僚・警察組織、幼児虐待、醜形恐怖、引きこもり……。本書は、90年代のバブル崩壊以降、悲観論が渦巻く日本の世情をふまえ、この国の不安、不満の本質を読みといている。まず、最近の異常犯罪の傾向について、町沢氏は80年代の快楽犯罪と比べ、90年代以降は自己愛的犯罪になったと指摘する。つまり、自分の存在を知らしめようとする犯罪である。一方、岸田氏は、共同幻想が崩れてから犯罪者の心理が見えにくくなったと言う。恨みの対象が必ずしもはっきりしないため、どこへ矛先が向くか、全くわからなくなってしまったのだ。さらに議論の焦点は、父性、母性論、日本人の官僚病、アメリカという呪縛、若者たちの身体と性、そして、フロイト、ユング以後の精神分析について等、興味深い話題がつきない。幻想にすがり、現実から目をそらすこの国の病理とは? 現代日本人の「自己愛症候群」を鋭く分析した刺激的対論である。
目次
第1章 あなたの隣にひそむ異常犯罪―新潟女性監禁事件をめぐって
第2章 崩壊する母性と父性―人間の本能は壊れているのか
第3章 日本人の官僚病は治せるか―自閉的共同体の構造
第4章 アメリカという呪縛を解く―ペリー・ショックと日本人のトラウマ
第5章 若者たちの過剰な自意識―身体と性愛について
第6章 精神分析はどこへ向かうのか―フロイド、ユング、ロジャースを超えて



