内容説明
世に私小説というものがあり、今ではなんとなく遠ざけられているが、実は近代日本文学の有力なスタイルなのではないかという指摘もある。というコムズカシイ話はさておき、『禁酒宣言』は代表的私小説作家の1人上林暁が自らの酔態ぶりを描いた13編からなる短編小説集。題名とは裏腹の飲み屋通いのお話です。「飲み屋とは、女将との会話が人生であり神話的な広がりを持つ独特の空間である」ことがしみじみとわかります。季節を問わずお酒がおいしい方々にうってつけの1冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
おおた
15
妻が若くして亡くなってから酒に溺れた私小説、というと背中を曲げて一人盃を傾ける印象がありますが、こちらはひたすら酒場通い。そして痛飲&泥酔。そんな日が続くといくら売れている小説家でも作品を書けず金が滞り、家族は着の身着のままというダメ人間ここに窮まれり。それでいて酒場では愛嬌よくママさんに絡んであまつさえ20歳以上年下の娘と同じくらいのママさんの肩に手を回したりする。同じ酒飲みとして反面教師筆頭となりました。きっかけとなる前日譚も気になります。2017/05/06
nstnykk9814
15
夏葉社の2冊と電子本に続く上林暁4冊目。だらしない酒飲みの酔態を遺憾なく曝しているあたりが私小説家の第一人者らしい著作。巻末の編者解説にもあったが、「斬新ではないが、古臭くもない」「まともな文章」こそが、この作家の大きな魅力なのだろう。2016/01/14
michel
13
★4.7。酒場の物語。暖簾をくぐれば、女がいて、男がいて、そして酒がある。私はスナックのママである母に育てられました。酔漢ほど愛すべき愚かな者はない、と私は思っています。酒場にはたくさんの出会いや別れの物語が生まれてるんだなー。時代は異なるのですが、作者の飲む人生と母の飲ませる人生とを重ねながら、何とも言えない感慨深い読書となりました。以前に読んだ三島由紀夫全集の付録に上林暁 が田宮虎彦との交流を書かれていたのですが、その事がここに中堅作家のTとの交流として書かれていて、またまた嬉しく読みました。2021/07/25
Red-sky
3
短編だからチョコチョコと。お酒の私小説。ちょっと昔の話だから飲み屋の話題2016/11/26
浦井
3
三週間くらいかけて、酒をちびちび飲むように読んだ。戦後すぐって大変なイメージがあるし実際そうだろうけど、毎日のように飲み歩いて人に絡んで翌朝後悔し家族に申し訳ないと思いつつまた飲みに行く武智さんが羨ましくなった。奥さんが長く入院した末に亡くなり寂しさもあって飲み歩いちゃうんだろうし、酒のせいで金に困ったり脳梗塞で何度か倒れたりと決して順風満帆ではないけど、暗さがない文章で、読んでいて穏やかな気持ちでいられる。2016/05/10
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