内容説明
二の矢を携えず、ただ一矢のみを持って真剣勝負に臨む侍の姿を通し、 武士道の真髄を描いた表題作。従妹の許婚の悪行を知らされると同時に、従妹への恋情に目覚める「怒る新一郎」ほか「千代紙行燈」「武道絵手本」など。大正15年の「小さいミケル」から、昭和18年「日本婦道記」が直木賞に推されてこれを辞退した時期までの苦行時代を、新たに発掘された11編を含め跡づける短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
姉勤
38
表題作のみ読了。戦国の世が終わり、太平の慶安期を迎えたが、尚武の気風が特に強い薩摩において、生まれてから一度も激した姿を見せたことがない青年武士、御堂慶之助。かといって唐変木というわけでなく、理に聡く、決断も行動も疾い。そして、弓を弾かせれば、若くして藩に比類するものないと知れ渡り、藩主島津家久の覚えも良い。当然嫉視も受ける。怒りとは、想定した希望が通らないと発するもの。怒らぬということは全てが想定通り。だとすると、コミカルに見えるこの話のサゲが…ホラー的で怖いな。2024/12/24
キムチ
24
おりしも周五郎の青春時代をばらす一冊を読んでいたので、この作品の持つ味の含みを楽しめた。彼は「焼却してほしい」と周囲に言っていた時期と作品群などがあったのだ。片思いするほど彼の作品にのめり、人生のこの時期に読み返し始めると私には至福の感慨。とはいえ、完成された彼の作品が脳底にあるだけに「?」という違和。正直、青っぽ過ぎて筋を追うのにガクガク。子供の時分に読んだ「神州天馬峡」や西条八十の子供向け短編を彷彿とさせる(兄たちの本)現代ものは「館、怪人、○○の鬼」などよくあったモチーフが。2014/01/23
タイガー@津軽衆
5
通算38冊、6月7冊目読了。山本周五郎の戦前、戦中、戦後の作品が収めらており、戦前のは山本自身あまり気に入っていない作品らしいです。確かにいつもの感じではないなって思いながら読んでいました。山本周五郎は現代ものより時代物がやはりよいと再認識しました。2018/06/29
タツ フカガワ
5
6年ぶりに再読。現代ものと時代ものの短編17作を収録。現代もののなかには少女小説や少年探偵小説もあって、周五郎の意外な一面を見るようで楽しい。しかし何といっても「怒らぬ慶之助」「雪崩」「紀伊快男児」「怒る新一郎」などで気持ちのいい涙を流すと、ついついまた周五郎の本に手が伸びてしまいます。2016/11/04
lastsamurai
4
短編に涙する、他の書籍に興味がわかず、止まらぬ周五郎の作品。 時代作品の合間に現代作品の短編があるが、これはいまひとつ。2015/07/10