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内容説明
「弱者にやさしい政治を」「差別のない明るい社会を」といった、だれも異議を唱えることのできない命題やスローガン。しかし、現代社会における「弱者」とは、ほんとうはどういう存在なのだろうか? 多様性をはらんだ一人一人が「弱者」と一括りされることで特権性を帯び、他者とのわだかまりを生んでしまっているのではないだろうか? 本書では、障害者、部落差別、マスコミの表現規制など、日常生活で体験するマイノリティの問題について、私たちが感じる「言いにくさ」や「遠慮」の構造を率直に解きおこしていく。
目次
第1章 「言いにくさ」の由来(「弱者」というカテゴリー 個別性への鈍感さ ほか)
第2章 「弱者」聖化のからくり(建て前平等主義 部落差別をめぐって)
第3章 「弱者」聖化を超克するには(共同性の相対化 言葉狩りと自主規制問題)
第4章 ボクもワタシも「弱者」(既成概念の見直し 新しい「弱者」問題)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
112
読友さんから『宿題』をもらったようで・・丁度大リーグでダルビッシュ(アジア人)に対する差別的な言動云々があったが、ダルの対応が大人だったとの事。この本は難しい。読むほどに私には難しい。属性はオール人間・人類で『皆が気にしなくなること!』これに尽きると思うのだ。『弱者』と言われる者が拳を振り上げたり、差別者になったりもする。その時々で『弱者』は変わるようだ。マスコミや新聞の言う『世間』に取り込まれないように、過剰に反応しないようにとは思う。人が二人いたら差別は生まれるが哀しいかな人は一人では生きていない。 2017/10/30
GAKU
68
障害者、部落差別、マスコミ表現規制などのマイノリティの問題について、「差別をなくそう」、「弱者には優しく」といった世間一般的スローガン。勿論正しいけれど、私としては心のどこかにちょっとひっかかる点、モヤモヤっとする点があった。それが何だったのか、この著書は明確に語ってくれていた。そう、そう、私がおぼろげ乍ら感じていたのはこういう事だったのです。現在の社会において本当の「弱者」とは誰なのか?世間の過剰な気遣いと保護により、「弱者」が「強者」へと逆転していないか?⇒2017/09/09
佐島楓
57
「差別とはどこからくるのか」についての考察。単なるきれいごとにしないという姿勢自体には共感できるが、表現や対象の問題で少し嫌悪感を抱いてしまった。この感情の正体も考察するべきなのだろう。2016/04/12
テツ
36
「弱者には全力をあげて優しく親切にしなければならない」という呪いが蔓延して(それが悪いこととは言わないが)「弱者とは誰なのか。何をもってして弱者と定義するのか」という問いをもつことすら禁忌とされているような現代社会。ある属性をもつ方(方々)が差別されていると表明してしまえば、もう批判することすら許されなくなる。弱者を批判することは許されないという呪いが世界を縛りつける。どんなことにでも思考を放棄して従ってしまうのはいけない。「何故?」といつまでも問い続ける姿勢を忘れてはならない。2019/04/16
きょちょ
29
作者の説の大半を肯定する私は、少数派なのだろうか・・・。 今まで言われていた「弱者」は、もはや「強者」だろう。 放送禁止用語、差別用語として、「八百屋」「肉屋」「じじい」「ばばあ」があるのはびっくり。「ひな祭り」「鯉のぼり」「福笑い」「スイカ割り」までくると、これらを差別用語と糾弾するのは異常としか言いようがない。 ただ、戦後教育=平等教育というのは納得しがたい。 平等教育は割と最近の考え方だ。 もちろん、誰でも一等賞のような平等教育を、私は肯定しない。 ★★★★2018/05/01